食用フグ雑種問題

5月24日、国立研究開発法人水産研究・教育機構(以下、機構)は、フグの大規模な交雑の発見をWEBサイト上に発表しました。フグの雑種問題とこれまでの魚介類の雑種問題と明らかに違いがあります。これまでにも、日本在来のスズキと養殖場から散逸したタイリクスズキの交雑などの問題が指摘されていました。しかし、これらの問題は、生態系へ影響、特に外来生物に関するもので遺伝的多様性の保全と言う観点からのものでした。在来のスズキとタイリクスズキの交雑個体が蔓延したからと言って、それを摂取すると命を落とす危険があるかと言えば、そのようなことはありません。しかし、今回、機構がその存在を明らかにした食用に供されているトラフグ属のフグの雑種問題は、環境問題の範囲には留まらない非常に危険な問題に発展する恐れが指摘されています。

フグは種ごとに有毒部位が異なります。この有毒部位は基本的に同じ種であれば変わりません。しかし、異なる2つの種の雑種の場合、現段階では必ず親と同じ部分が有毒部位であるとは言えないとされています。我々日本人はフグ食を行いますが、事故がほとんど発生しないのは、有毒部位を適切に除去できているからです。この適切な除去をするためにはどこに毒があるのかを把握している必要があります。フグの雑種の蔓延はこの安全なフグ食を行うための前提が崩れることを意味しています。

現段階では、雑種もしくは種が同定できないものは流通させないことになっています。しかし、雑種が増えれば混入する危険性が増す恐れもあります。また、フグは比較的高価な食材ですが、純粋な個体の数が減れば、価格の上昇も考えられます。

今回の問題は本来分布域があまり重ならないはず種が、海水温の上昇などの原因により分布域が変化したために発生したのではないかと指摘されています。今後、どのような対策が必要なのか関係各者がじっくり検討する必要があります。

[写:t-mizo@fliker]

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