気が付けば朗朗介護(11) -介護する側が少しでもリフレッシュできるよう-

ここ15年、出張や旅行の時には弟と相談し、どちらかが家に残り母の介護を受け持ってきたのだが、先月弟が新居を構えて家を出てしまい、実質私一人で母の介護をすることになった。つまり、思っていたより早く「老々介護」がスタートしてしまった。まだ「朗朗介護」と呼べるほど、心に余裕はないのだが。

まず母に頼んだのは、ショートステイに行ってもらうこと。元来、そういう施設に行くのを嫌がる母は、デーサービスも利用しないのだが、これからはそうはいかない。母のためでなく、私のため。私にとっての死活問題なのだ。時間をかけて説得した結果、母は渋々了解した。

「ショートステイは、介護しているご家族のためにあるのですよ」

契約のために訪ねた特別養護老人ホーム(特養)で、担当の方がそう言ってくれた。

ショートステイは「短期入所生活介護」と言い、数日から1週間程度の短期間施設へ入所し、日常生活の介護や機能訓練などの介護を受けながら施設での生活を送ることのできるサービスである。「短期入所生活介護(ショートステイ)はこんな時に!」という手引きにはこう書いてある。

・介護する側が体調を崩してしまって、自宅で介護するのが難しくなった。

・旅行や冠婚葬祭で一時的に自宅をあけたい。

・介護負担軽減のために短期間面倒を見てほしい。

要は、介護する側が少しでもリフレッシュできるよう、施設で短期間介護をしてもらうことなのだ。できるだけ在宅介護を続けたいとは思っても、介護する側の体調や精神面のも限度がある。介護の負担は想像を絶するものなのだ。最近、夜中に母の声やちょっとした物音で目が覚めてしまい、そのあと寝付けなくなることが多くなった。母はできるだけ静かにしようと気を付けているというのだが、不自由な体でポータブルトイレや車いすに移動すれば、どうしても大きい音がしてしまう。私は「転倒したか?」と気が気じゃない。短期間でも介護から解放されるなら、旅行になど出かけなくてもリフレッシュされるのだ。

ショートステイの利用は、ケアマネージャーに相談することから始まる。施設の空きや、利用者の介護状態から探してくれるのだが、どこも混んでいるようで、早急の利用には対応できない。少なくても1~2か月前からの申し込みが必要なのである。今回のショートステイ先は、宅からほど近い特別養護老人ホーム(特養)。契約のため、施設の見学を兼ねて訪ねたが、担当者と看護師が母の日常生活を細かく聞き取り、できるだけ日常生活と変わらずに過ごせるように考慮してくれる。また特養は、個室のない「多床室」、一人用個室のみの「従来型個室」、一人用個室に加えユニット(10人程度の生活単位)ごとに共同生活室が用意される「ユニット型個室」に分類されるのだが、ここはユニット型個室。広々とした部屋にベッド、テレビ、クローゼット、洗面台などが完備されていた。全国的な傾向として、多床室や従来型個室から、1人で過ごす個室と仲間との交流が図れる共同生活室を備えたユニット型個室への切り替えが進められており、現在は約半数がユニット型、3割強が多少室だという。 次号では、母のショートステイ初体験について報告したい。(続く)

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筆者:渋柿
昭和53年、母38歳で脳溢血。一命をとりとめたものの右半身麻痺、失語症に。
私は17歳から介護生活を開始。38年が過ぎた今も、在宅介護が続いている。
平成28年、母76歳、息子の私55歳。老々介護が間もなく訪れる。
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[写:hu album @fliker]

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