斬り合いなんか不要に? ガンダム鉄板ネタ「ミノフスキー粒子」がなかったら ホワイトベース墜落か

アニメ『機動戦士ガンダム』ではレーダーを妨害し、ビーム兵器にも応用できる「ミノフスキー粒子」なるものが存在します。この粒子があるから近接戦闘がメインになるという設定ですが、もしこれが無効化されたらどうなったでしょうか。

従来戦を一変させたレーダーの実用化

 電波で敵の位置を探知できる装置「レーダー」。現実の世界では、ほとんどの大型兵器に搭載され、戦闘に欠かせない存在となっています。 ただ、人気アニメ『機動戦士ガンダム』ではレーダーを事実上無効化させるという「ミノフスキー粒子」が存在するという設定の下、第2次世界大戦のような艦載機、あるいはモビルスーツ同士の近接戦闘や、宇宙艦艇による近接距離での砲撃戦が描かれています。 そういったことは本当にあり得るのでしょうか。レーダーおよび「ミノフスキー粒子」が使えるメリットとデメリットについて改めて見てみましょう。

 レーダーの歴史は古く、1904年にドイツの発明家が「船の衝突が避けられる装置」として、距離5kmでの船舶探知に成功しています。この時は各国軍隊に注目されませんでしたが、その出自を鑑みるとレーダーは最初から「乗りものへの搭載」を念頭に置いて生まれたものだといえるでしょう。 レーダーが注目されたのは、1930年ごろからです。アメリカとイギリスで、航空機が通過すると、電離層の観測が妨害される現象から、逆に「航空機を探知できるのではないか」と考えられ、電磁波を使った「ラジオ・ロケーター」の開発が始まります。 ドイツでも1933年より、海軍でレーダー開発が始まり、翌年に距離12kmでの船舶探知、距離700mでの航空機探知に成功しています。 イギリスも、ほぼ同時期の1935年にレーダー開発に成功し、第2次世界大戦中の1940年には、グレートブリテン島上空へと進入するドイツ軍機を地上に配置されたレーダーで早期発見して、いち早く戦闘機を送り込む迎撃戦術を採り、英本土航空戦、いわゆる「バトルオブブリテン」で勝利しています。 レーダーの進歩は著しく、イギリスでは1941年に早くも航空機にレーダーを搭載します。夜間爆撃するドイツ軍機を目視で発見することは難しかったため、レーダーによる探知は有効だったのです。 では、アニメ『機動戦士ガンダム』で描かれる近距離での白兵戦闘や、宇宙艦艇による砲撃戦はどうなのでしょうか。

ミノフスキー粒子は宇宙船の浮遊にも

 そもそも、『機動戦士ガンダム』に登場する「ミノフスキー粒子」とは、目に見えない立方格子「Iフィールド」を形成する架空の粒子です。この立方格子は電磁波に作用し、レーダーの機能を大きく阻害します。また、ミサイルの誘導を行う大規模集積回路の機能障害も発生させ、命中率を著しく低下させるのです。

 可視光線については影響が少ないため(諸説あり)、光学照準やレーザー通信は可能ですが、ミノフスキー粒子散布下では、事実上、目視できる距離、すなわち近距離で戦闘するしかないのです。 実際、ルウム戦役において、地球連邦軍とジオン軍の宇宙艦隊が砲撃戦を開始したのは、2万8000mという近距離で、これは第2次世界大戦の海戦と大差ありません。 もっとも、レーダーがごく近距離でしか使えなくても、そこに敵が存在していないわけではないので、凄腕のモビルスーツパイロットが「目視」で遠距離射撃を行う描写も見られます。また、ニュータイプのパイロットは敵の存在を精神的に感知して戦闘するので、ミノフスキー粒子下でも影響は最低限となります。 なお、ミノフスキー粒子が発生させる「Iフィールド」は、ホワイトベースのような軍艦でも宙に浮かせるほどの物理的な場力を発生させます。Iフィールドを利用して限られた空間にエネルギーを閉じ込めて剣とする「ビームサーベル」も実用化されています(Iフィールド同士が反発するので、ビームサーベル同士で切り結べます)。 普通に考えると、ホワイトベースをIフィールドで浮遊させたとすると、Iフィールドが支えた船体の重みは下の地面にかかるので、大規模自然破壊が発生するようにも思いますが、そのような描写は見られないので「船体の真下にのみIフィールドを連続発生させて船体を浮遊させ、Iフィールド自体は地面には届いていない」のだと思われます。

ジオン軍も想定していた? 超遠距離砲の存在

 改めて『機動戦士ガンダム』の基本設定であるミノフスキー粒子ですが、これを無効化する粒子などが開発されたら、戦闘はどのように変化するでしょうか。

 ミノフスキー粒子が無効化されたなら、宇宙では遠距離で敵を感知できるようになるため、ビーム砲による長距離砲撃が行われるでしょう。ちなみに、アニメ『機動戦士ガンダムMS IGLOO』に登場するジオン軍の長距離ビーム砲「ヨルムンガルド」は、有効射程300km、最大射程2000kmという性能を誇ります。この兵器は前線の他の兵器のサポートにより、遠距離砲撃を行うものですが、ミノフスキー粒子がなければ、このような超遠距離における艦隊同士での砲撃戦が発生します。 もちろん、地球連邦軍の「セイバーフィッシュ」などの艦載機も、誘導ミサイルを使用できます。現実世界に目を移すと、ロシア軍の空対空ミサイルR-37は、ブースター使用時で射距離400kmを誇ります。宇宙世紀のミサイルは遥かに高性能でしょうから、数百km以上離れた距離からの正確なビームと、誘導ミサイルによる攻撃が行われるに違いありません。 前述したルウム戦役における戦闘開始の距離2万8000m(28km)と比較すると、これはあまりにも遠距離となります。ミノフスキー粒子が無効化される兵器が登場したなら、モビルスーツは近接する前に、艦艇からのビーム砲を受け、艦載機からも目視できる距離よりも遠いところからミサイルが飛んでくるでしょう。

意外に“近眼”? モビルスーツのセンサー

 なお、モビルスーツが携行する兵装は、目視での光学射撃を前提としたマシンガンやバズーカが多く、こうした精密誘導攻撃に対応するようにはできていません。ジオン軍の主力モビルスーツ「ザクII」のセンサー有効範囲は3200m、地球連邦軍の高性能モビルスーツ「ガンダム」でも5700mです。

 また、モビルスーツのビームライフルやビームサーベル、搭載核融合炉(核爆発をIフィールドで封じ込め小型化しているという設定)は、『ガンダム』世界での設定「ミノフスキー物理学」を応用したもののため、使用不能になる可能性もあるでしょう。地球でホワイトベースに「ミノフスキー粒子の無効化手段」を使用したら、船体が地上に落下するかもしれません。「敵味方の戦闘がひとつのTV画面内に収まるように」という、作画上の理由から生まれたミノフスキー粒子によるレーダー無効化設定。ミノフスキー粒子が無効化された世界での戦闘はあまりにも味気なく思えることから、こうした設定を作ったことで逆に作品の魅力アップにも貢献したといえるのではないでしょうか。

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