煙が出てない! LNG燃料フェリー「さんふらわあ」ついに就航 国内初 大阪~別府航路“新時代”へ

国内初のLNG燃料フェリー「さんふらわあ くれない」がついにデビューしました。環境性能だけでなく静粛性も大幅に向上し、船内は一段と豪華に。燃料が変わっても、料金体系はそのままです。

いよいよ瀬戸内海へデビューした「さんふらわあ くれない」

 商船三井グループの「フェリーさんふらわあ」が大阪~別府航路に投入する国内初のLNG(液化天然ガス)燃料フェリー「さんふらわあ くれない」(1万7114総トン)が2023年1月13日、ついに就航しました。「瀬戸内海の女王」を再び標榜した豪華な内装がポイントの同船。フェリーさんふらわあの赤坂光次郎社長は「非常に満足している。船内は広く、ゆったりと過ごすことができる」とアピールしています。

「さんふらわあ くれない」は、1997年12月に就航した「さんふらわあ あいぼり」(9245総トン)の代替船として、三菱重工業下関造船所(山口県下関市)で建造されました。伝統工芸品である別府竹細工など和のイメージを取り入れた内装を施し、クルーズ船のような丸窓を取り付けています。フェリーさんふらわあは、定期航路で豪華な船旅を気軽に楽しめる「カジュアルクルーズ」を掲げて新造船を送り出してきましたが、その最終形態に位置付けられています。 3フロア吹き抜けのアトリウムを中心として、展望大浴場の面積やレストランの席数も1.5~2倍と、大型の船体を生かし充実した設備を整えました。客室もほぼ個室化されたこともあり、旅客定員は既存船とほぼ変わらない716人に抑えられています。「幅広い年代、特にファミリー層に乗ってほしい。スペースを広く取っており、子供も自由に動き回れる。レストランでは瀬戸内の味を提供する予定で、食事も楽しんでいただければと思っている」(赤坂社長) 目玉は、最上階の8階に置かれたスイートクラスのフロア。客室にはデッキチェアを備えたバルコニーが設けられており、外で風を感じながらフェリーでのひと時を過ごせます。特に日が長くなる夏は、瀬戸内海の風景を明るい時間に眺められます。 また、スイートとデラックスクラスには2つの部屋を内扉で繋げる「コネクティングルーム」が国内の長距離フェリーでは初めて設置されており、最大で7人が利用できるようになっています。 ドライバーズルームも居住性が向上しており、通常はトラックドライバーのみが利用できますが、ゴールデンウイークなどの多客期に「スタンダードシングル」として一般販売ができるようにしています。

LNG化で高くなるのか?

 こうした内装の豪華さを誇る「さんふらわあ くれない」は、舶用燃料としてLNGを使用する国内初のフェリーという画期的な存在です。 LNG燃料は従来の燃料油に比べて二酸化炭素(CO2)では約25-30%、硫黄酸化物(SOx)ではほぼ100%の排出削減効果が見込めることから、赤坂社長は「今できる最善を尽くした環境型のフェリー」と説明しています。 同船には、LNGとA重油の両方を燃料として使用できるデュアルフューエルエンジン(DF)が採用されており、主機関には欧州舶用メーカーのバルチラが開発した4ストロークエンジン「バルチラ31DF」を、発電機にはヤンマーパワーテクノロジーの「8EY26LDF」を搭載しました。LNG燃料タンクは船体後部の甲板上に置かれており、外観上の特徴となっています。 特に「バルチラ31DF」は静粛性と経済性を両立した高効率エンジンで、運航を大いに支えることになるでしょう。外から見ると煙突から出る煙がほとんど見えないことがわかるかと思います。 LNG燃料の供給は大分県の別府港で、タンクローリー4台を使用して行います。別府港までLNGを輸送し、そこでスキッドと呼ばれる導管を接続して4台同時に接岸中のフェリーへ供給することで、供給時間の短縮を図るとのことです。別府国際観光港には「さんふらわあ くれない」の就航に合わせて2階建ての新ターミナルを建設。岸壁には船首と船尾両方のランプを使用できる設備や、LNG燃料供給スペースを確保しています。 LNG燃料はロシアによるウクライナ侵攻などの影響で価格が上がっていますが、赤坂社長は「原則として料金設定を値上げすることは今のところ考えていない。それよりも乗船していただく方が先決だと思っている」との認識を示しています。

「さんふらわあ くれない」に続くLNG燃料フェリーの2番船「さんふらわあ むらさき」は2023年4月14日に就航します。最新鋭船が2隻揃うことによって、大阪~別府航路のサービスは大きく向上します。 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大きく打撃を受けたフェリーさんふらわあの旅客数も2019年比で80%、乗用車で100%まで戻ってきており、明るい兆しが見えています。赤阪社長は「新造船を投入することによって旅客で100%、乗用車で110~120%まで目指したい」と意気込みを語っていました。

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