東日本大震災から5年8か月 津波注意報に人々の変化は

11月22日の早朝、岩手県大船渡市に津波注意報の発令を告げるサイレンが鳴り響いた。東日本大震災から5年8か月。あの大津波の経験は沿岸被災地に住む人々の意識に変化を与えたのだろうか。

11月22日午前5時59分、福島県沖を震源とするマグニチュード7.4の地震が発生した。岩手県内では最大震度3を観測。気象庁は地震発生から2分後の午前6時2分、福島県に津波警報、青森県太平洋沿岸、岩手県、宮城県などに津波注意報を発令。まちには津波注意報の発令を告げるサイレン音が鳴り響き、高台への避難を呼びかける音声が防災無線から繰り返された。

サンマの水揚げ本州一を誇る大船渡市魚市場では今季のサンマ漁が終盤を迎え、この日は大型サンマ船7隻64トンの水揚げが予定されていた。海に隣接する同市場で働く人たちの動きは早かった。
同市場の職員や仲買人たちは屋上駐車場にフォークリフトを避難させたうえで、自らも高台に避難。サンマを水産加工会社などに運ぶために集まっていた大型トラックの運転手たちも車とともに高台に避難した。

東日本大震災で被災した経験から自らの命だけでなく、トラックやフォークリフトなど値の張る商売道具を守るための行動を取ったのだ。

同市大船渡町の高台にある市指定の避難所・大船渡地区公民館には津波注意報発令から30分ほどで約40人が避難したほか、避難所には入らず駐車場に停めた車の中にいる人や海の方を見つめている人の姿も。注意報発令が早朝だったため、家族そろっての避難が多い。
中にはポータブルDVDプレーヤーやミニカーなどのおもちゃを持ち込み、1歳の子どもを退屈させないような工夫をしている30代の母親の姿もあった。
市職員の夫を持ち、いざというときは自分1人で子どもを連れて避難しなくてはいけないため、常に用意している避難用のバッグは季節ごとに中身を入れ替えているという。
避難している人たちは高台にいる安心感からか落ち着きを見せながらも津波への警戒心を隠せなかった。

大船渡市では市内の小学校12校と中学校8校すべてが休校。震災の津波進水区域にあるスーパーやコンビニエンスストアが営業を休止したほか、沿岸部の事業所は自宅待機、復興工事の現場は工事をストップした。

注意報の解除を受けて工事や営業が再開。まちは活気を取り戻した。
東日本大震災による未曾有の大津波に襲われた経験は住民の心に深く刻まれている。今回の素早い避難行動はその表れだ。
教育委員会や各事業所もいち早く反応し、休校や自宅待機等の措置を取った。しかし、海にほど近い場所で営業や業務を続けたコンビニエンスストアや事業所もあるという。
これらの店や事業所の多くは責任者が地元の人間ではない、つまり東日本大震災による津波を実際に経験していない人が津波注意報を過小評価したように感じられる。

同市で観測された津波は40センチで確かに大きな被害は出なかったが、沿岸部にいる人たちには「地震が起きたら高台に避難」という命を守る行動を改めて心に刻んでもらいたい。

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