溶連菌、手足口病、ロタ、ノロ…子育ての「常識」ワードに無頓着なパパの言い分

ここは、子育て中のパパが集まる居酒屋。今夜もグラス片手に、悩めるパパたちがグチをこぼし合っています。どんなことを話しているのか、ちょっと耳を澄ませてみましょう。

1:子育ての常識ワードは未知の世界

A:「おまえさ、溶連菌って知ってる?」
B:「ヨーレンキン? 知りませんよ、新しいアパレルブランドかなんかですか」
A:「じゃあ手足口病は?」
B:「手足口? なんですかそれ?」
A:「ロタは?ノロは?」
B:「子ども番組のキャラクターですか? ロタちゃんノロくん、みたいな?」
A:「違う。なあ、知らないよな、知らなくて普通だよな?」
B:「まあ普通、あんまり知らないと思いますけど、なんですか?」
A:「子どもによくある病気だよ。妻に叱られたんだよ。『どうしてそんな常識も知らないの!?あなたは子どもの病気について無関心すぎる、無責任だ』って鬼の形相で責められた…あー」
B:「やっちまいましたね、先輩」
A:「人ごとじゃないよ、おまえも子ども産まれたんだろう?」
B:「そうですかね…」

2:鉄のカーテンに阻まれる男の育児参加

A:「妻にしてみれば『知ってて当然』なんだろうけど、だいたい妻はどこでそんな知識を得てるわけ?」
B:「サイトじゃないですかね、子育てサイト、ほらcamilyとか、ウーマン何とか、とか」
A:「おまえ、そういうのサイト見るのか?」
B:「いや。子どもが生まれてすぐ読もうと思ったんですけどね、挫折しました」
A:「オレも読もうと思ったんだけど、読めないんだよ。女性専用車両に間違って乗ってしまったぁ!みたいな感じで、場違いさに耐えられず画面を閉じた…」
B:「なんか結界がありますよね。ここから先はママだけ!みたいな」
A:「あるある。授乳室のカーテンみたいな、鉄のカーテンがあるな」
B:「あっ、わかった。それですよ」
A:「どれ?」
B:「鉄のカーテン。世の中の子育ては『ママ』向けにチューニングされている。男は入りにくい」

3:やっているつもりでは、妻に叱られる
A:「ていうかさ、少し前までそれ当然だったよな。男は仕事、女は家事育児って役割分担。子育てしなくてもよかった」
B:「その歴史があるから、男はいつまでも子育て参加ができない、結局、子育ての社会では男はマイノリティなんですよ」
A:「マイノリティか」
B:「そう、少数派、異端、そこにいるのが不思議という存在ですよ」
A:「そこまでいうか、でも子どもを遊ばせに公園に行っても、不審者に間違われないように気を配らなきゃいけないのは男だけだろうな」
B:「ママには分からない苦労でしょうね」
A:「その程度で苦労しているとバレたとたんに、妻に馬鹿にされそうだ」
B:「ですね」
A:「毎日毎日汗水垂らして、一生懸命、妻や子のために働いているんだけど、それだけじゃダメなんだよな」
B:「まぁ、ダメでしょうね。妻だって同じように働いてますからね」
A:「働いて、子どもの世話をして、家事やって、病気のことまでチェックして、ついでに夫に文句を言って、ってどんだけマルチタスクなんだよ」
B:「先輩だって僕だって、それなりに子どもの世話はしてますよ。保育園の送り迎え、帰ったら風呂に入れるし、休みの日は公園だし」
A:「でも足りないんだよな。『あなたはちょっと手伝っただけでイクメンってほめられていいわね』ってイヤミの後『育児の基本すら知らない』って、すごい剣幕で怒られる。なんでだろうな」

4:夫の育児は使えない新人レベルでいいのか

B:「思うに、経験値が足りないんじゃないですか。僕は子どもが生まれてまだ1年目、先輩だって3年目、会社で言えば新人みたいなモンじゃないですか」
A:「新人が担当するにはでかすぎるプロジェクトだよな、子育てって。ましてプロジェクトリーダーがうちの奥さんだし」
B:「あっ、そこですよ」
A:「どこ?」
B:「プロジェクトリーダーが奥さん、っていうの、誰が決めたんでしょう?」
A:「誰って…普通子育ては母親が主導するもんだって疑問にすら持たなかった」
B:「だから怒られるんじゃないですか、僕ら」
A:「ママ達から見たら、夫はいちいち指示を与えないと使えない新人ってことか…ううむ。自分の立ち位置が見えてきた。よし、帰るぞ」
B:「どうしたんですか。先輩」
A:「帰る。家で妻に指示されなくてもできること、探してみるわ。俺は自分が『使えない新人』でいることに耐えられないんだ」
B:「急に張り切ると『やり方が違う』って怒られるんじゃ…」
A:「それでもいい。とりあえずやってみることが大事だろう。だから帰る。おまえは?」
B:「わかりました。僕も使えない新人から卒業を狙ってみます」
A「よし、お互いにがんばろうな」
B:「がんばりましょう」

固い握手を交わして、それぞれ家路についた2人ですが、さて、少しは子育てを「自分の仕事」とすることができたでしょうか。

(文・曽田 照子)

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