キタサンブラックは本当に強いのか?

ここまでビッグレースを勝ちながら、その実力に半信半疑な評価をされている馬も中々珍しい。少なくとも筆者は未だに疑念を持ち続けている。有馬記念で現役生活最後のレースに臨むキタサンブラックがその馬だ。

キタサンブラックが「あ、この馬強いかも」とファンに認識され始めたのは昨年の宝塚記念くらいからだろうか。結果は3着であったがマリアライト、ドゥラメンテの追撃をゴール前ギリギリまで粘るレース振りは菊花賞・天皇賞・春を勝った実力がフロックでは無いことを証明して見せた。

同馬があまり評価されてこなかった理由は2つある。その一つは持ち時計。宝塚記念後の秋にはジャパンカップを制するも勝ち時計は2分25秒8。当然ペース・馬場状態も関係あるが、古馬の頂点を競うG1だとしたらかなり物足りない時計だ。「キタサンブラックは時計が速いレースには対応できないのではないか?」圧倒的な1番人気(1倍台)になったことがないこともこの部分が影響していると想定している。

更に続く有馬記念では3歳のサトノダイヤモンドの末脚に屈し2着。ここで2つ目の理由の「戦ってきた相手に恵まれていた」が挙げられる。2016年はG1を2勝し年度代表馬に輝いた同馬だが本当の勝負・評価は2017年に持つ越されることになった。

今年はG1に昇格した4月の「大阪杯」から始動。ここでも1分58秒9のタイムで勝つには勝ったが、やはり早い時計ではないし、2着のステファノスもそれほど強い馬ではない。しかし、続く天皇賞・春は更新不可能と思われていたディープインパクトの持つ世界レコードを上回る3分12秒5の信じられないタイムをただき出すから厄介だ。

ただしこの時の京都競馬場は高速馬場で5着のアルバートまでが従来のレコードタイムを上回っている。キタサンブラックだけが激走してこのタイムなら納得はいくがどうも腑に落ちない印象だった。そして続く宝塚記念の謎の敗戦もさらに評価を難しくする事になった。(先行するも9着に敗れる。この敗戦により海外遠征は白紙となった)

すでに秋3戦で現役を退くことが発表されていた同馬の秋初戦は10月19日の天皇賞・秋。当日は史上稀に見る不良馬場。テレビ越しで見ても水が浮いているのが分かるほどの馬場状態であった。

いつものように絶好のスタートを切ると思われていたが…まさかの出遅れ。しかし鞍上の武豊は焦ることなく中団のやや後ろからレースを進めた。第3コーナーから4コーナーにかけて瞬間移動したかの様に先団に取り付き、他馬が少しでも馬場の良い外目のコース取りをする中、内に突っ込み直線に入ってから徐々に外に持ち出す武豊の完璧な騎乗で2着のサトノクラウンに競り勝ち優勝。勝ち時計は2分8秒3がいかにこのレースが過酷だったかを物語っていた。(通常は2分を切る)

ここでまた筆者の中での評価が難しくなってしまった。普通に考えれば、スタミナ・精神力・総合能力が高い馬でなければこの馬場状態を乗り切れる訳はない。キタサンブラックは間違いなく強いのだ。しかし今回は武豊の会心ともいえる騎乗があまりに素晴らしかったため、どうしても素直に「強い」と思えなかった。前年に勝っている秋2戦目のジャパンカップは落鉄の影響もあってか、シュバルグラン、レイデオロに交わされ3着。持ち時計は2分23秒9と大幅に縮めたが、やはり勝ってこそ価値があると思う。

そしていよいよ24日の有馬記念でキタサンブラックは最後の戦いを迎える。陣営はおそらく目一杯の仕上げで臨んで来るだろう。凡走する事は考えにくい。枠順も絶好の1枠2番。有馬記念は3歳時に3着、昨年は2着。まだ勝っていないG1だ。願わくば後続を引き離し、これまでの概念を覆してくれるような勝ち方を期待したい。クリスマスイブの中山競馬場ではどんな「まつり」が聞けるのか。。。今から楽しみだ。

筆者:松岡慶

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