商品価値がないカツオ 『ゴリ』カツオの話

今や高級魚の仲間入りをしたようなカツオですが、カツオには、特有の『ゴリ』と呼ばれる肉質のものがあります。静岡では石カツオと言うようですが、地方によって『ゲジ』『ゴシ』などと言われます。『ゴリ』カツオの特徴は、身が羊羹のように固くなり、刺身で食べると変な生臭さがありとても食べることができません。焼いたり茹でたりすると食べることができますが、完全に生臭さは取れません。カツオとしての商品価値はありません。

『ゴリ』カツオは昭和の時代は2キロ前後までの小判カツオにしか出ないものとされていました。1本釣りのものしか『ゴリ』は出ないと言われており、当時のカツオ船は春から秋口までしか漁をしていませんでした。漁場は南西諸島から千葉沖あたりまででしたが、漁船のエンジンの性能が上り、船体も改良され遠い漁場にも短時間で行けるようになりました。

その後巻き網船団が増えカツオの水揚げが増えて来ると、1本釣り以外にも巻き網であっても、さらに大型であっても『ゴリ』カツオが出るようになりました。また片身だけ『ゴリ』や、尻尾の方だけ『ゴリ』というカツオも見られ始め、昭和の時代に考えられていた『ゴリ』の原因『釣り上げた時の衝撃で即死して、うっ血したもの』という説が崩れました。

調査の結果、現在今考えられているのが『餌』です。食べる餌によって『ゴリ』になりやすいと言われています。もう一つが『水温』ですが、どちらも決定的な証明はできていません。しかし最近になって興味深い事例が報告されました。カツオの遊泳するタナが深い時期と漁場に『ゴリ』が多いという報告です。これは表面水温にカツオが馴染めなく中層や下層を泳いでいる場合で、漁師たちはカツオを表層に浮かすために撒き餌を沢山撒きます。これにつられて表層に浮いてきたカツオを釣るわけですが、この急激な水温の差が『ゴリ』の原因ではないかと考えられています。漁師さんたちの言葉だけに説得力があります。

安い大衆魚だった時代は『ゴリ』が出ると別の料理に使えていたものが、今や高価になり高級魚扱いにより『ゴリ』が1本でも出ると店は利益が飛んでしまうため、今まで以上にカツオに対しての要求が高くなっています。

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