美し過ぎる絶景と哀愁を新しい国立公園内で ~ 奄美十景:犬田布岬

11月の徳之島紀行、前回は空港からすぐの場所にある”陸の中の海”「ウンブキ」を訪れました。今回は空港から車で約30分程にある徳之島伊仙町の西端に向かいます。車を降りると、心地よい風が全身を包み込んでくれました。薄曇りの空の中、太陽の光が少しずつ陽が落ちて行く様子がわかるこの場所は、奄美十景の一つと言われている、犬田布岬です。
徳之島 犬田布岬 奄美群島国立公園
観光バスも入場出来る広々とした駐車場の前には、すでに廃墟となっている民宿と、カフェの入った建物があります。カフェの2階は屋外休憩所になっているので、岬を眺めながら一休みするのも良いでしょう。周囲に広がる芝生、その先に見える海、そして広く広がる空に圧倒されます。

徳之島 犬田布岬 奄美群島国立公園 展望台

展望台へ向かって歩くと、スニーカーを履いていても感じられる芝生の力にやはり植物の元気の良さを感じます。歩みをさらに進めると、目前には岬の全貌を捉えられ、海風を浴び、視覚、触覚、嗅覚が研ぎ澄まされていくような開放感に満たされます。大げさかもしれませんが、この心地良さには、叫びたくなるような不思議な感動がありました。

徳之島 犬田布岬 奄美群島国立公園

実は徳之島を含む奄美大島、加計呂麻島、与論島などの群島は「奄美群島国立公園」として今年の3月7日に国内34カ所目の国立公園として誕生したエリアでもあります。展望台に登ると、素晴らしい絶景が迎えてくれます。断崖絶壁にはちょうど太陽の陽射しが当たり、琉球石灰岩の海蝕崖が雄々しい景観をみせていました。下を覗くとエメラルドグリーンから群青色に変わって行く水面に引き込まれそうになります。美し過ぎるということは同時に恐怖を感じる、という貴重な体験も味わえます。顔を上げると水平線の先に何故か哀愁を感じてしまいます。
徳之島 犬田布岬 奄美群島国立公園

次に展望台から移動し、岬の端へ向かって下っていくと、目の前に大きな大きな塔が出現します。戦艦大和の慰霊塔です。慰霊塔は現在でも4月7日に慰霊祭が行われているといいます。第二次世界大戦末期の1945年4月7日、山口県徳山湾沖から救助物資を運ぶために沖縄へ向かった戦艦大和は、東シナ海で1,000機以上の航空機からの爆撃によって撃沈されました。戦後長い間、戦艦大和が沈んだのは徳之島犬田布岬の西方沖と考えられてきましが、実際には屋久島の西方沖だったのです。

徳之島 犬田布岬 奄美群島国立公園 戦艦大和の慰霊塔

海へ向かって大きくそびえ立つ慰霊塔の姿に圧倒されますが、沈んだ場所が不正確であった背景なども知るると、より一層の哀愁が込み上げてきます。それは、戦艦大和へ乗り込んだ特攻隊、沈没した艦隊の慰霊の想いとは別に、こんなに美しく広大な海と空を、彼らがどのように見ていたのか、戦争という時間の流れの中では海の色も空の色も、美しいと感じる心を持つことができたのだろうか?もしくは、海も空も敵から身を守る術としての存在になってしまったのか…様々な想いが次から次への去来して打ちひだかれていきます。

徳之島 犬田布岬 奄美群島国立公園
慰霊塔の先には遊歩道があり、岬の端へ行くと石灰岩のごつごつした岩場のようになっています。そこには金属製のモニュメントがありました。人の形をしていて、慰霊塔との対比に不思議な別空間が生まれているように見えました。そして遊歩道を囲む沢山の海浜植物は、台風の影響を受けつつも生き生きとして、とても魅力的です。

犬田布岬を訪れた際には、岬の端の端まで来ることをお勧めします。

【筆者紹介】
Kite:ヒップホップダンスのインストラクターをしながら、インスピレーションを求めて日本や世界を旅する女性ダンサー。

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