相次ぐクマ被害、対応限界も=市街地出没急増で苦慮―自治体

 クマによる人身被害が止まらない。30日時点で今年度の犠牲者は12人と、過去最多だった2023年度(6人)の2倍となった。餌不足などにより市街地での目撃情報は急増。今年9月からは自治体の判断でクマへの発砲が可能となったものの、多発する地域では職員不足で対応が追い付いていない。
 今年度、秋田県では10月29日までに3人が死亡、53人が負傷した。出没情報をまとめた県のサイト「クマダス」によると、県内の目撃件数は同月だけで5000件を超えた。県の担当者は「人の生活圏での出没が増えている」と語る。
 出没の増加により、対応に当たる県や市町村の職員、猟友会などの負担は深刻化。鈴木健太知事は「マンパワーも限界に来ている」と訴え、小泉進次郎防衛相と28日に面会、自衛隊による箱わなの設置といった後方支援を要望した。
 全国最多の5人が犠牲となった岩手県では30日、県内市町村の担当者を集めた緊急連絡会議を開き、被害防止に向けた対策を話し合った。岩手大の山内貴義准教授は「(農作物などの)人為的な餌に依存している個体は冬になっても(人里に)姿を現す可能性が非常に高い」と危機感をあらわにした。
 改正鳥獣保護管理法に基づき、9月からはクマが市街地に出没した場合、市町村の判断で発砲が可能となる「緊急銃猟」制度が始まった。住宅街などでヒグマが目撃された札幌市では10月、緊急銃猟を初適用。秋元克広市長は「人間の生活圏に近い所でクマが繁殖して人慣れするということが近年顕著に出てきている。ハンターの数が確保できないのは全国的な課題だ」と訴えた。
 ツキノワグマの生態に詳しい秋田県立大の星崎和彦教授は時間や場所といった「被害のパターンが通用しない状況になりつつある」とし、「習性を理解して正しく恐れる必要がある」と強調する。 
〔写真説明〕ツキノワグマ(資料写真)

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