【ワシントン、ニューヨーク時事】米連邦準備制度理事会(FRB)は28、29両日、連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、金融政策を協議する。市場では雇用悪化リスクを受け、9月の会合に続き、追加利下げ決定が確実視される。一方、株価は人工知能(AI)投資ブームに支えられ、史上最高値を更新。「強気相場」は過熱の様相も帯びる中、FRBは政策運営で微妙なかじ取りを迫られている。
24日のニューヨーク株式市場では、9月の米消費者物価指数(CPI)でインフレ圧力が想定ほど強くないことが示され、FRBの利下げを後押しする内容となったため、買いが膨らんだ。代表的な株価指標、ダウ工業株30種平均は初めて4万7000ドル台に乗せて引けた。
AI関連の成長に対する楽観的な見通しが、相場の大きなけん引役だ。株高基調は個人消費も押し上げており、カンザスシティー連邦準備銀行のシュミッド総裁は「消費は夏を通じて加速した」とみる。
ただ、AIブームは「(2000年代初頭の)ITバブルを連想させる」(日系証券)との声が上がる。AIの成長が期待外れだった場合、相場は急激に下落する可能性もある。
また、中国のレアアース(希土類)輸出規制強化をきっかけに米中間で貿易摩擦再燃の兆しも出てきた。米議会与野党の対立激化で政府機関の一部閉鎖が続くなど、不安材料には事欠かない。
そうしたリスクの一つが米国の雇用情勢だ。政府閉鎖で今月予定されていた9月の雇用統計は発表されていない。ただ、有力な代替指標とされる、民間雇用サービス会社ADPによる全米雇用報告では、同月の民間就業者数は前月比3万2000人減と、2カ月連続で縮小した。パウエルFRB議長は「労働市場は今、非常に大きな下振れリスクを示している」と警戒感をあらわにする。
労働市場の鈍化傾向は鮮明となりつつあるが、行き過ぎた利下げは景気過熱リスクを高めかねない。シュミッド氏は「経済や金融市場の状況を踏まえれば、FRBの現行政策スタンスはわずかに景気抑制的でしかない」と指摘し、利下げ余地がほとんどないとの見方を示唆した。

