
老朽化に伴う「造り替え」が実施された首都高速1号羽田線の一部区間が完成。新たな「更新線」を実際に見てきました。そもそも、造り替えが必要となった根本原因は解決されたのでしょうか。
完成した「更新線」を報道陣へ公開
首都高速道路は2025年10月29日午前1時に、1号羽田線「東品川桟橋・鮫洲埋立部」の交通を、新たに建設した「更新下り線」へと切り替えます。それに先立ち22日に更新部分の施設が報道陣向けに公開されました。
東京モノレールと並走する1.9kmの同区間は、海面近くを走る桟橋区間の「東品川桟橋部」と、埋め立て地の上に整備された「鮫洲埋立部」から構成されています。いずれの区間も開通から半世紀以上が経過し、各部で老朽化が進行していました。しかし、運河にせり出した高架橋は構造的に大規模な修理・メンテナンスを行うことが難しい状況であり、将来的な道路機能の維持に問題を抱えていました。
そのため、2016年2月から“造り替え”に相当する「大規模更新」事業がスタート。仮設の「迂回路」を陸側に整備し、交通を順次切り替えていくことで、大規模な通行止めをすることなく新道の建設が進められました。
1号羽田線は迂回路を建設した後、まず2017年に上り線を切り替え、その後本線を一部取り壊して「更新上り線」を整備していきました。2020年からは、更新上り線を暫定的に下り線として運用しつつ、残りの既存道路の撤去と更新下り線の工事を進め、このほど更新下り線も完成を迎えたのです。
首都高速道路の石田高啓氏は「100年先も安心・安全な道路を目指した」と強調します。“造り替え”を決断する根本原因だった「そもそもメンテナンスが難しい」構造も、大きく改善が図られています。
東品川桟橋部では、橋桁を既存施設より高い位置に設置し、その直下には作業用の「恒久足場」をレイアウト。メンテナンス性の向上を図りつつ、橋桁と海面を離し、恒久足場でガードして、海水による腐食の進行を防いでいます。また、橋脚部も腐食を防止するため、表面がステンレス板でカバーされています。
また、鮫洲埋立部区間はもともと地表部でしたが、更新線は函型の構造物の上に道路がつくられており、路面の下にはトンネル状の作業用スペースが確保されました。これによってメンテナンス性が向上しているとのことです。
長期にわたる更新事業について、石田氏は「地盤改良や施工スペースの確保など、当初の想定よりも苦労した工程もありましたが、大きなプロジェクトをひとつ成し遂げたという充実感があり、やっとここまで来たという思いでいっぱいです」と思いを語りました。
1号羽田線は更新下り線への切り替え後、現在は上り線となっている迂回路と「大井JCT」のランプとの接続部を、更新上り線へと接続させる工事も行われる計画で、2026年春頃には、作業実施のために一部区間で通行止めも行われる見込みです。