地雷被害や住民強制退去=停戦後も非難の応酬―タイ・カンボジア武力衝突1カ月

 タイとカンボジアが未画定の国境地域を巡り本格的な戦闘を開始してから24日で1カ月。双方が停戦に合意して武力衝突は止まったが、タイでの新たな地雷被害やカンボジア住民の強制退去などに関し、非難の応酬を続けており、緊張緩和は見通せない。
 ◇「巡回中の兵士負傷」
 「この場所で12日、巡回中の兵士が対人地雷を踏み負傷した。けさも新たに1個の地雷が見つかり、計5個発見された」。東南アジア諸国連合(ASEAN)各国のタイ駐在武官らは20日、停戦監視のためタイ東北部スリン県のカンボジアとの国境地域を訪問し、タイ軍の前線基地近くで担当者の説明を聞いた。時事通信の記者や他の外国メディアも同行した。
 現場は森林の中の緩やかな斜面で、標高の高い部分にタイ軍、低い場所にカンボジア軍がそれぞれ駐屯している。静かな状況では互いに話し声が聞こえるぐらいの近さで、戦闘前は巡回中に出会うこともあったという。
 7月24日に始まった戦闘は、米中とASEAN議長国マレーシアの仲介で同月28日に停戦合意。ただタイは同日以降も3カ所で兵士が対人地雷で負傷したと発表し、「カンボジアが新たに敷設した」と訴える。カンボジアは「タイの発表は根拠がなく不当だ。わが国は対人地雷禁止条約(オタワ条約)を順守している」と反論した。
 ASEAN各国の駐在武官らは国境から数キロ離れたスリン県パノムドンラック郡のゴム農園も訪れ、地中に残る不発弾の処理を見守った。「3、2、1」。責任者が合図するとごう音と共に煙が上がり、火薬のような臭いも漂った。タイ軍によると、今回の戦闘に関連して国境地域では今月1~18日に960個の爆発物を処理するなどしたが、まだ不発弾はあり、ゴム農園でも5発残っているという。
 ◇タイ軍が侵入
 カンボジア側でも14日、ASEAN各国の駐在武官らが国境地域を訪問。タイと国境を接するカンボジア北西部バンテアイミアンチェイ州の集落で、タイ軍が有刺鉄線とタイヤなどを設置した区域を視察した。カンボジア政府はタイ軍が領内に侵入したと批判している。
 タイ政府は「有刺鉄線は本来の国境に基づいて設置した。タイは1970年代以降の内戦から逃れたカンボジア市民に避難所を提供したが、一部は長年不法にとどまった」と主張。住居がタイ側にあるとされた10世帯以上の住民は強制的に退去させられた。
 元の住居近くにテントを設置し、4人の子供らと暮らす男性はカンボジアメディアの取材に対し、「タイ軍は突然やって来た。農地と家を残してどこに行けばいいか訴えたが彼らは耳を貸さなかった。ほとんどの物は持ち出せず、将来がどうなるか分からない」と涙ながらに語った。(スリン=タイ=時事)。 
〔写真説明〕タイのゴム農園に着弾した不発弾の処理で立ち上る煙=20日、東北部スリン県
〔写真説明〕タイ・カンボジア国境地域で、タイ軍兵士が対人地雷を踏んで負傷した地点を示す同軍関係者=20日
〔写真説明〕タイ軍が設置した有刺鉄線をカンボジア側から視察する東南アジア諸国連合(ASEAN)各国の駐在武官ら=14日、北西部バンテアイミアンチェイ州(カンボジア情報省のSNSより・時事)

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