日本産ホタテ、供給網進まず=トランプ関税、対米販路阻む―メキシコで加工

 【ニューヨーク時事】日本貿易振興機構(ジェトロ)などが目指していた日本産ホタテをメキシコで加工し、米国で販売するサプライチェーン(供給網)構築が困難な情勢となったことが17日、分かった。ジェトロは中国による日本産水産物の禁輸措置を踏まえ、対米販路を拡大する構想を描いていたが、トランプ米大統領の高関税政策が直撃。先行き不透明感から関係者の投資意欲が減退したとみられる。
 日本の農林水産物の主力輸出品であるホタテは、主な出荷先だった中国で加工した冷凍品が米国に再輸出される事例が多かった。ところが、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出に反発した中国が2023年8月から日本産水産物の輸入を全面禁止したため市場が消失。同年のホタテ輸出額は前年比24%減の計689億円と急減した。
 急務となった販路開拓でジェトロが注目したのは、水産加工が盛んなメキシコ北西部エンセナダ。24年3月には北海道や宮城県などの加工業者を含む14社がエンセナダの施設を視察した。米国へのアクセスが良いことから複数の企業が体制整備を検討し、当地で殻むきしたホタテを西海岸などに出荷する事業が動きだした。
 24年の供給網立ち上げを目指していたが、トランプ大統領の復権で潮目が大きく変わった。不法移民対策が不十分などとして、トランプ氏は高関税賦課でメキシコを揺さぶり続けている。関税の先行き不透明感に加え、地球温暖化が原因とされるホタテの不漁も事業にブレーキをかける。
 一方、中国は今年6月、懸案だった日本産水産物の輸入再開を認めると発表した。漁業者らには朗報であるものの、日中関係が悪化すれば水産物が「外交カード」に再び利用されかねないため、過度の対中依存はリスクがつきまとう。ジェトロは「メキシコでの加工も選択肢」として残しつつ、販路多様化に取り組む方針だ。 
〔写真説明〕青森県・陸奥湾で育った養殖ホタテ=2023年9月、青森県平内町の平内町漁業協同組合

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