美濃和紙、風船爆弾の材料に=岐阜の元教諭が絵本出版―「戦争の問題、子どもにも」

 太平洋戦争中、旧日本軍は米国本土攻撃のため、和紙の気球に爆弾をつるす「風船爆弾」を飛ばした。地元に伝わる国の伝統的工芸品「美濃和紙」が使われたことを知った岐阜県関市の元小学校教諭堀野慎吉さん(76)は、その史実を絵本で訴えている。堀野さんは「子どもも読める絵本を通じ、戦争と平和の問題を伝えたい」と話す。
 絵本は2024年出版の「風船爆弾~和紙気球は海を渡った~」。主人公の女性は戦時中、武儀高等女学校(現・関高校)で憲兵の監視の下、和紙をこんにゃくのりで貼り重ねる作業に従事。絵本では、気球が登場する歌を孫が歌ったのを機に女性の経験が語られる。女性の両親が詳しい目的を伝えられずに和紙の増産を命じられた様子も描いた。
 風船爆弾は戦時中に日本各地で作られ、約9300個が米本土に向け飛ばされた。1945年5月に米オレゴン州でピクニックをしていた民間人6人を死亡させたのが主な戦果とされる。
 堀野さんは、武儀高等女学校で美濃和紙の貼り合わせに動員された知人から聞いた話などを基にストーリーを考案。文献や資料も調べ、史実に沿った話に仕立てた。絵本の文は堀野さんが書き、絵は知人のデザイナーに依頼した。風船爆弾を題材としたのは、堀野さんが小さい頃、両親が紙すきの仕事をしていたことも理由にある。
 20年ほど前に知人から話を聞くなどするまでは、美濃和紙が風船爆弾に使われていたとは知らなかったという堀野さん。「和紙は『白』のイメージだったが、人を殺すための武器の材料になったということで『黒』のイメージも持った」と振り返る。
 堀野さんは戦争に関する絵本を書き続けており、「風船爆弾」が6冊目となる。絵本を選ぶのは、歴史を子どもにも分かりやすく伝えるためという。堀野さんは「戦争を体験した人が減る中、悲惨な戦争を忘れてしまってはいけない」と力を込めた。 
〔写真説明〕風船爆弾に関する絵本を出版した堀野慎吉さん=5月16日、岐阜県関市

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