超豪華フェリーだけど「40時間!」 国内最長「太平洋フェリー」長距離が好調のワケ 結局コスパがいい!?

名古屋港―仙台港―苫小牧港を結ぶ国内最長の定期航路を運航する太平洋フェリー。名古屋まで乗り通せば約40時間かかりますが、それでも、その長い航路が人気を集めているようです。どう利用されているのでしょうか。

とにかく長い40時間! それは「クルーズ気分を気軽に」

 名古屋港―仙台港―苫小牧港(北海道)結ぶ国内最長の定期航路が「太平洋フェリー」です。同社は旅客の利用者が多い長距離航路という特性を生かし、単なる移動手段にとどまらない「レジャーとしての船旅」を提供するため、充実したパブリックスペースを備えた船を投入してきました。

 太平洋フェリー東北支店東日本旅客担当の榎本圭祐リーダーは「クルーズ船に乗るほどではないけれども、気軽に楽しめる船旅」とアピールポイントについて説明します。

 同社は現在、2005年1月に竣工した「きそ」(1万5795総トン)、2011年3月に竣工した「いしかり」(1万5762総トン)、そして2019年1月に竣工した新鋭船「きたかみ」(1万3694総トン)の3隻体制で運航を行っています。建造ヤードは全て三菱重工業下関造船所です。

「各船ともしっかりとコンセプトがあり、これが大変好評です。フラッグシップである『いしかり』の人気は確かにありますが、『私は「きそ」の方が好きだよ』という方もおり、それぞれにカラーがあって、それぞれにファンがついてるというようなイメージです」(榎本さん)

 基本的には名古屋―仙台―苫小牧航路に「いしかり」と「きそ」が、仙台―苫小牧航路に「きたかみ」が投入されていますが、榎本さんが話すようにそれぞれの船に合わせて異なる内装が施されている点が太平洋フェリーの大きな特徴となっています。

それぞれ異なるコンセプトの3隻

 まずフラッグシップに位置づけられている「いしかり」は「エーゲ海の輝き」をコンセプトにきらめく青い海と空、白壁の家々をイメージした内装が施されています。南太平洋のリゾートホテルをイメージした「きそ」は色鮮やかなインテリアや南国風のオブジェが特徴的。いちばん新しい「きたかみ」は「SPACE TRAVEL」をコンセプトとして、白色を基調に映像やライトアップが映えるデザインとなっています。

 船内設備も違いがあり、ビュッフェスタイルのレストランと大浴場は3隻全てが備えていますが、名古屋からの「いしかり」と「きそ」にはスイートルームや軽食を提供するスタンドコーナー、そして「乗船時間が長い」(榎本さん)こともあり、国内のフェリーでは唯一ライブショーを行う専用の劇場「シアターラウンジ」などが設けられています。

 一方で仙台からの「きたかみ」にはこうした設備はありませんが、近年の需要にこたえて全ての客室をプライバシーの確保ができる個室とカプセルタイプの寝台にしました。

「名古屋―苫小牧や名古屋―仙台は、寝ている間だけでは到着しません。そこに何を提供するかということを考えた時、トータルで空間を楽しんでもらうという発想になります。シアターラウンジや、カラオケなどもその一つで、旅館やホテルみたいにお風呂の近くにゲームコーナーを配置するなど、船上での時間がより楽しいものとなるよう設計されています」(榎本さん)

甲板で繰り広げられる「大イベント」を作ってます

 名古屋―仙台間の所要時間は約21時間40分。北行きの場合、名古屋を19時に出港した船が仙台に到着するのは翌日夕方の16時40分です。南行きは仙台を12時50分に出港し、名古屋には翌朝の10時30分に到着します。

 そして名古屋から苫小牧まで通しで乗った場合、航海距離は約1330km、所要時間はなんと約40時間にもなります。

 名古屋―仙台航路に乗船すると14時半くらいに福島県相馬沖で太平洋フェリー同士がすれ違う姿を見ることができますが、これも豪華な船内設備やショー、ライブなどとともに、乗客を飽きさせない工夫のひとつです。

「カーフェリーというと、夜中にすれ違ったり、見えてもすごく遠かったりしますが、お客様向けのサービスとして、あえて近くに船を寄せて汽笛を鳴らし合いながら手を振る体験は、船旅の思い出としてきっと皆様の心に残ると思います」と榎本さんは話していました。

名古屋-仙台が好調!

 興味深いのは近年、名古屋―仙台航路の利用が貨物・旅客共に増加しているということ。名古屋―苫小牧を通して乗る乗船客も100人以上いる場合があり、日によっては個室が全て埋まっているということもあるほどです。

 榎本さんは利用者が増加している理由について「自分で運転するよりフェリーでゆったり旅を楽しみながら移動したいという需要に加えて、他のコスト上昇にも要因があるのではないか」と話します。

「例えば名古屋から仙台まで乗用車で移動する際、距離が長いので途中で1泊しようという方も多いと思います。しかし昨今ではホテル代が従来に比べて高騰しているため、高速代や燃料代と合わせるとかなりの出費となります。そうであれば、船に乗った方が長距離運転からも解放されてゆったり過ごせますし、総合的にパフォーマンスが高いと判断する方も増えているのではないでしょうか。貨物に関してはドライバー不足や残業規制といった要因もあると思います」

 また、名古屋―仙台航路では首都圏発の周遊型ツアーによる利用も増えています。東京から東北に来て観光したのち、フェリーで名古屋へ行き、伊勢や信州、北陸などを巡るパターンと、最初に東海方面へ行ってフェリーで仙台へ向かい、宮城県や山形県の温泉泊まって、次の日に帰るというパターンが人気です。

 榎本さんはこれについて「フェリーそのものが、その旅の目的地の一つとして受け入れられていると感じます」と嬉しそうに語ります。

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