「被害者の無念晴らす」=捜査本部の警部、解決へ募る思い―八王子スーパー3人射殺30年・警視庁

 「絶対に被害者の無念を晴らしたい」。1995年7月に東京都八王子市のスーパー「ナンペイ大和田店」で3人が射殺された事件は、30日で発生から30年を迎える。捜査本部で捜査を続ける警視庁捜査1課の荒川秀樹警部(55)は、「諦めなければ道が開けるかもしれない」と事件解決へ思いを募らせる。
 警察官になったのは事件の2年後。しばらくして警察署で連続強盗の捜査を担当した。上司に「犯人を見つけるまで帰ってくるな」と指示され、防犯カメラの映像を頼りに捜し回り、逮捕にこぎ着けた。「諦めなければ何とかなる」。そのときに信念が生まれた。
 2007年に捜査1課に配属されると、世田谷一家4人殺害事件の担当を経て、12年3月にナンペイ事件の捜査本部に加わった。当時、すでに発生から17年が経過していたが、「先輩方が解決できなかった難事件。責任重大だ」と気が引き締まったという。
 捜査本部では、凶器とみられるフィリピン製回転式拳銃「スカイヤーズ・ビンガム」の捜査に当たった。12年7月、同国に渡航。銃製造工場や現地警察で話を聞いて回ったが有力情報は得られなかった。
 13年には、事件に関与した可能性があるとされた中国人の男を取り調べた。住んでいたカナダから旅券法違反容疑で日本に移送後、「自供してくれるんじゃないか」との期待を込め、生い立ちや人となりを入念に調べて取調室に入った。
 男は家族や中国の話題には淡々と応じつつ、事件については一貫して「何も知らない」と供述。新たな情報は得られなかった。「これ以上聴いても同じことの繰り返し。うそをついているようにも見えなかった」と振り返る。
 その後も、捜査本部に寄せられた情報の裏付け捜査をしたり、当時の関係者に改めて話を聴いたりしているが、めぼしい進展はない。
 この30年でさまざまな鑑定技術が進歩したが、現場には防犯カメラも、血痕などの犯人のDNA型もなかった。突破口となる証拠の乏しさに加え、事件を知る関係者が亡くなるなど、時間の経過も捜査を難しくさせている。
 今年3月、捜査の中心を担う立場となった。捜査に迷ったとき、捜査本部に置かれた被害者の写真を見上げ、「答えを教えて」と問い掛ける。「きょう、あすにも犯人を捕まえたい、その気持ちだけだ」と意気込んだ。 
〔写真説明〕インタビューに応じる警視庁捜査1課の荒川秀樹警部=10日、東京都千代田区

externallinkコメント一覧

コメントを残す

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)