高まる存在感、残る課題=日本とも協力強化―ベトナム終戦から50年

 【ハノイ時事】南北ベトナムが戦ったベトナム戦争がサイゴン(現ホーチミン)陥落による終戦を迎えてから、30日で50年。統一されたベトナムはグローバルサウス(新興・途上国)の一角として、国際社会での存在感を高めつつある。半面、戦争に伴う人々の間の心情的なわだかまりや、米軍が使用した「枯れ葉剤」の後遺症といった課題は、いまだ残っている。
 ベトナムの2024年の国内総生産(GDP)は前年比7.09%増。25年も8%以上という強気の目標を掲げる。人口も戦後生まれの若い世代を中心に1億人を超えた。最高指導者のトー・ラム共産党書記長は終戦50年に合わせた論文で、南北統一の意義を強調するとともに「これまで以上に自立的で強靱(きょうじん)な経済を築くことが不可欠だ」と表明した。
 外交面でも立場の異なる大国などと、しなやかに渡り合う。インド太平洋地域で覇権を争う米中それぞれと最上位の「包括的戦略パートナーシップ」を結び、ロシアとも伝統的な友好関係を維持する。
 今月27日からは石破茂首相が訪問し、ファム・ミン・チン首相との会談で日越の安全保障協力強化で合意。トランプ米政権の高関税政策を受け、中国が東南アジア諸国への影響力拡大を図る中、ベトナムは安保面でも地域の重要プレーヤーとなりつつある。
 発展の一方、戦争の傷痕が完全に癒えたわけではない。米軍は戦争中、ゲリラの拠点だった森林に枯れ葉剤を投下。被害者支援団体によると、ベトナム人480万人が浴びたと言われ、深刻な障害が指摘されている。下半身がつながった結合双生児として生まれた「ベトちゃんドクちゃん」のように、その影響は戦後世代にも残る可能性がある。
 兄との分離手術を受けた「ドクちゃん」ことグエン・ドクさんは、時事通信の書面インタビューで、何度も手術を受け、健康問題にしばしば直面していると打ち明ける。それでも、どんな障害者であれ「困難を乗り越える意志と強さを常に持ち続けてほしい。自分を助けることができるのは、誰よりも自分自身なのだから」と語った。 
〔写真説明〕28日、ハノイで石破茂首相(左)と記者発表に臨むベトナムのファム・ミン・チン首相(EPA時事)
〔写真説明〕自身を追ったドキュメンタリー映画の看板の前に立つグエン・ドクさん=2月28日、ハノイ

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