農業は可能性だらけ。宮崎県綾町から農業を盛り上げる、ベジオベジコの挑戦

40年以上前から、まちぐるみで有機農業に取り組む、有機農業発祥の地・宮崎県綾町。ここで、愛情と思い・技術が詰まった有機野菜を多くの方に届けるべく、新しい流通を作っているのがベジオベジコです。農業を盛り上げていくために、農家になるのではなく売る側として起業した、ベジオベジコの田村健登さんに販路を拡大させたことによる農家さんの変化や、事業展開について伺いました。

農業を盛り上げるために、売る側に立つ

「自分が農家になって農業を盛り上げる? 自分のことで精一杯になって、何も盛り上げられないんじゃないかな。だったら、売る側になって大きな流通を作って、農家みんなを幸せにしたほうがいい」

これが、僕の将来を変えた大切な言葉でした。

もともと実家が農業を営んでいたため、将来は家を継いで農家になりたいと小さい頃からずっと思っていました。理由は単純に父親の働く姿がかっこよかったというのもありますが、その地の文化を守っているのが農業だと思ったから。

たとえば、田んぼがなくなれば稲がなくなり、するとしめ縄を作る藁がなくなり、お正月の飾りがなくなってしまう。日本の伝統文化を含めて守っているのが農業で、それを引き継ぎたいと。それに、新しい価値を作れば農業を変えられるかもしれないという可能性も感じていたんです。だから、大学は農学部に進み、農家を継ぐ準備を着々と進めていました。

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そんなとき、後に代表になる平林と意気投合。「第一次産業の農業から宮崎を盛り上げたいね」と話していて、その半年後、大学4年生の春にベジオベジコを創業。その直前に言われたのが最初の言葉でした。平林がインターンをしていた宮崎県にあるIT企業の社長がくれたアドバイスです。

この言葉がなければ、何の疑いもなく2人で農業を始めていました。たしかに、いいものをちゃんと売るための大きな流通を作って、農業を稼げる職業にしたい。まずは売る側になって流通を作った後、農家になって販売しよう、そう考えるようになりました。

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東京で挑む販路拡大

創業から4年が経ち、現在ベジオベジコでは3つの事業を展開しています。1つ目は当初から運営している「スムージー宅配事業」。健康志向で野菜にこだわる人のために、有機農業の綾町産の野菜をメインに扱っています。ただ、それだけでは達成できない課題があり、事業を2つ増やしました。

課題とは、僕らは農家さんの名前や思いを野菜と一緒に届けたいけど、スムージーは野菜の組み合わせがたくさんあるので、なかなか難しかったんですよね。本当なら「このニンジンは、この農家さんがこんな思いで作っていて、こんな風に美味しいんですよ」と直接伝えたい。

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この解決策として、ベジオベジコのお客さんが多い東京の渋谷区にデリバリー拠点を設け、配達エリアなら最短1時間でお届けする「VEGERY(ベジリー)」のサービスをスタート。

綾町から直送した美味しい状態の野菜を最短1時間でお客様に直接手渡しできるようになり、お客さんは好きな時に好きな野菜を注文できるようになりました。さらに、文京区の根津に八百屋もオープン。これはありがたいことに地元の方がファンになってくれています。

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農家さんに訪れた変化

少しずつですが、確実に販路を増やせていることで、農家さんにも変化が出ています。あるおばあちゃん農家さんは、僕らが野菜を受け取りに行くたびに「儲かったよ、ありがとう。あんたたちのおかげでお金を貯められているんよ。」と言ってくれるんです。

おばあちゃんたちの技術はとても高いけど、売り先が直売所1つだけだったりするんですよね。小さくても僕らの販路が増えたことにより、農家さんが少しでも儲かるようになったのは、本当に嬉しいです。
また、あるパパイヤ農家さんからは、「あんたらが売ってくれるようになったおかげで、パパイヤが市場でも高く評価されるようになったよ。」と言われました。僕らが広めたから市場での引き合いが増え、取引価格が上がって嬉しいと。実際、僕らにそんな影響力はないので原因は違うと思いますが、そういう可能性を秘めている。

いい野菜を広めることで市場に価値を認められ、単価が上がれば確実に農家さんに還元されます。仮に僕らを通して売れなかったとしても、相対的に良くなっていくんだなと思いました。

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最近では、農家さん自らが、どんな野菜が売れるのかを意識していて、意欲的に野菜を作って提案してくれるようになりました。だから僕らもそれを東京で販売して、お客さんからの声をフィードバックする。農家さんもSNSに投稿されたお客さんの声を自ら見て、「こういう声があるからやめられないね!」と言ってくれるようになっています。

食べる人の意識まで変えていきたい

ただ、後継者不足は喫緊の課題です。綾町は有機農業ブランドによって、農業の移住者が多いのは事実。40年続く有機農業の土地は、なかなか受け継げるものではないから人気なんです。でも、そんな綾町でも後継者が見つからず、今の代でやめると言っている農家さんが多く、後継者不足は深刻な問題です。

有機農業ですごくいい土の畑や木があっても引き継げなければそこで終わってしまいます。10年後には綾町産のマンゴーや日向夏がなくなっているなど、十分に考えられる話。

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だから、僕らが生産部門を作ったり、販路を広げたりして、農家さんが儲かる仕組みと新規就農者が入って来やすい環境を作らないといけないと思っています。まず実現させるのは、サービス拠点を拡大させて、農家さんの思いも一緒に届けられるように輪を広げていくこと

いいものをちゃんと後世にまで残していけるように、誰がどんな思いで作っているものなのか、食べる人の意識まで変えていきたい。そうして、農業を変えて業界を盛り上げていきたいと思っています。

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