【インタビュー】とにかく『人』が好きだから。ワーママが働き続ける理由〜ホテルフロント勤務〜

今回インタビューしたワーママHさんは、都内にあるホテルで勤務11年目を迎えたベテラン。その間産休を2回取得し、ワーママとしての生活も確立させてきました。現在も3年生と2年生のお子さんの子育てをしながら仕事を続けています。
勤務時間は、午前10時〜17時までの時短勤務。
仕事の内容は、主にお客様対応です。具体的には、ホテルフロントでのチェックインとチェックアウト。また、予約電話や部屋の不備があった時などの対応、そしてCS(顧客満足)を向上させるためのスタッフ内活動にも力を入れています。

会社からのオファーでワーママになることを決意

――なぜホテル業界に入ったのですか?
 私は結婚を機に東京に来たので、当然、当時は東京に友達もいなく“人間関係を作る為”と“妊娠するまでのつなぎで働こう”という本当に軽い気持ちではじめました。
ホテル業界を選んだ理由は、その時住んでいた家からも近く接客サービス業の経験があったことに加えて、私が東京へ来たばかりで不安しかなかった時、見知らぬ人に何度も助けられた経験から“私も東京に来た旅人に親切にして、不安を安心に変えたい”と思ったからです。そんな理由から足を踏み入れたホテル業界は、様々な人との関わりも面白くてやりがいもあり、抵抗なく続けられました。

――“つなぎ”ということは、妊娠したら辞めるつもりだったのですか?
はい、妊娠したら当然辞めるつもりでしたし、ワーママになるイメージは全く抱いていませんでした。やりたいことはありましたが、いつか子供の手が離れたらやろう、くらいにしか思っていませんでした。
でも、いざ支配人に妊娠の報告をしたら「産後、また戻ってきてくれるよね?」と言われたんです。産休制度についての知識もありませんでしたし、ホテルという24時間体制の仕事でママが働けるなんて考えてもいなかったので、はじめは驚きました。でも、“戻って来てほしい”と言ってくれたことへの喜びも後押しして、だんだんと「戻ってきたい」という気持ちに変化していきました。

――妊娠中の苦労はありましたか?
それが全くありませんでした。この職場に妊婦さんがいること自体初めてだったらしく、“何が大変で何が出来るのか分からないから、やりたいようにしてくれていい”と言ってくれたんです。勤務時間も相談の上で決めて、体調が悪い時にも休みを取りやすいよう人を多めにシフトを組んでくれました。

――今はそういう職場も増えていると思いますが、随分恵まれていましたね!
そうですね。ただ、“必要とされているのかな”というさみしさを感じたことも事実です。でも、その分“居てくれてよかった”と思われるようにいつも以上に手を抜きませんでした。妊婦ということに甘え過ぎず、出来る限りみんなと同じように働こうと思っていました。

”自分の人生を生きている”いう実感

――その後、出産を経て2回の産休を取得しました。復帰後、子育てと仕事の両立で苦労したことは何ですか?
途中で引っ越しをして家が遠くなってしまったので、時間に余裕がもてませんでした。保育園の送り迎えはいつも急いでいて、常に小走り(笑)
月曜日と金曜日は荷物も多くて大変でした。だから、下の子が小学校に入学した時の解放感は本当に大きかったです。
それ以外は、良いことばかりでした。約1年間の産休中は育児ノイローゼ寸前だったので、仕事に行けることがとにかく嬉しかった。子育てばかりで自分の時間がなかった期間に比べると、“自分の人生を生きている”という実感がありました。
あくまで私の考えですが、子育てを生きがいにしたくなかったので、仕事上で目的を持てた時こそ生きている感じがしました。

――接客サービス業だと気苦労も多そうですが…
基本的に「人」が好きなので、お客様と出逢うことに喜びを感じるし、楽しい。
もちろん失敗や大変なことがあった時は落ち込みますが、回復するのもお客様という「人」を通してなんです。

働き続けるために出来ること

――11年目に突入するそうですが、長く続いている理由はなんですか?
やはり、ホテルの仕事が楽しいからです。
「人」と出会い続けているからでしょうか。
一度だけ辞めたいと思ったことがありましたが、その理由も「人」でした。一緒に働く上で心地よさを保てないような出来事が多かったのでちょっと考えてしまいましたね。
あとは、産休明けでも以前と変わらない待遇をしてくれたことへの感謝や、子供都合のお休みや早退などで迷惑をかけているんじゃないか?という気持ちから、「その分、人より一生懸命やらなきゃ!」と奮い立たせている部分もあります。

――ホテルの仕事をする上で、ママだからこそ持っている強みは?
やはり、お子様へのサービスです。単に子供の扱いに慣れているというだけではなく、子連れママの気持ちが良く分かります。求めているものや声掛けなど、自分もママだからこそ痒い所に手が届く接客を出来るよう心がけています。

――一緒に働くスタッフに対してはいかがですか?
結婚や妊娠を考えているスタッフを安心させられることです。自分がそうしてもらってきたように、受け入れやすい環境をつくれると思っています。

――これまでで得たものと、これからの展望は何ですか?
10年も働いていると、お客様だけではなく多くのスタッフとの出会いもあります。その関わりの中で、自分と違う考えを知ることが出来たり、認め合うことの大変さを知ったり、一人ではできなかった成長の機会を得られました。
他には、CS向上委員(顧客満足向上のための活動をスタッフ同士で考えて実行する活動)を長年やってきて学んだこともあります。
新しいことを始める為に流れを作り、それを浸透させていくにはそれなりの大変さが伴い、時間もかかることを知りました。それでも私は「やりたい、やってみたい、やれそう」という気持ちがあれば困難があっても続けられるんです。この諦められない性格が功を奏して、活動が評価されたり、一緒に活動するメンバーが大きく成長して力を付けていく姿を見たりすることもできています。
これからの展望は…そうですね、続けさせてもらえる限り働き続けることですね!

インタビューを終えて
Hさんのホテルでは、これまではなかった子育て中のママを採用する事例や妊娠出産を経て復帰する女性スタッフが増えているそうです。
これは、時間をかけて、自分に出来ることは何かを常に考えながら働き、周囲の信頼を築いてきたHさんという良い事例があってこその結果だと思いました。

Hさんに「お子さんが成長したら勤務時間の拡大を希望しますか?」と質問したところ、「自分が出勤できない時間帯のお客様を知りたいという気持ちもあるけれど、子供との食事の時間を大切にしたいので、それが必要なくなるまでは今のスタイルで働きたい」と答えてくれました。
話の中に「人」がキーワードとして度々登場していましたが、「人」が好きで「人」を大切にしている分、自分の想いも大切にしている人だと感じました。正直な人とも言えるでしょう。

ワーママの道には様々な葛藤がありますが、「人」も「自分」も大切にできる強さが何より必要なのかもしれません。

(文・亀山 美千代)

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