
不正通行者に対する「高速道路料金の確実な徴収」を実現するための改正法が施行されました。関連法の条文も書き換えられたことで、今まで泣き寝入りしていたケースも解消されるかもしれません。
未払い料金は「会社に請求」しやすく それだけでない変化
「道路整備特別措置法及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法の一部を改正する法律」が、2023年9月6日に施行されました。今回は、高速道路の維持管理や進化のため、料金徴収期間を50年延長し最長で「令和97(2115)年9月30日」までとしたことに注目が集まっていますが、もうひとつ大きな変化があります。 今回は、料金未払いがあった際の手続きを円滑にする「高速道路料金の確実な徴収」などのために、必要な措置が講じられました。具体的には次の2点です。
(1)車両の運転者に加え、使用者にも高速道路料金を請求できることを明確化。(2)軽自動車・二輪車による料金不払時に使用者情報の取得ができるよう措置。「高速道路の料金所を突破するなどの未払いがあった際、ナンバープレートの情報などから車両を突き止めて事後にドライバーへ請求をしています。大半は払ってもらえますが、必ずしも徴収できていなかったケースがあります」――国土交通省の担当者はこう話します。 上記の(1)は、車検証上の車両の「使用者」にも通行料金の請求ができることを明確化するものです。これについては「車両の権原を有し、車両の運行を支配し、管理する者であり、車両の運行について最終的な決定権を有する者」と説明されています。要するに法人の車両を想定し、その会社へ料金を請求しやすくしたのです。 ただ、「必ずしも徴収できていなかった」というケースはたとえば、「自分は運転していなかった」と否認される場合や、料金徴収に反応してくれない場合などがあるといいます。 ゆえに然るべき措置をとろうとしても、これまでは“強く踏み込めない”ケースがあったとか。それを解消するため、今回は高速道路の料金を支払う対象などを明記した構造改革特別区域法施行令などについて改正が行われています。
これまでの法律では「訴訟に勝てない」!?
構造改革特別区域法施行令では、高速道路などを通行する「車両から徴収する利用料金」という表現が、「車両“の運転者等”から徴収する利用料金」というものに改められました(構造改革特別区域法施行令 第6条の4。“”は編集部が付した)。 わずかな違いですが、従来の表現では、支払い能力を有する者を指していると解釈できるか、あいまいだったといいます。そこで法令が定める支払い対象を明確化したわけです。 もうひとつ、軽自動車・二輪車による料金不払いがあった場合、高速道路会社などが「軽自動車検査協会などから直接的に使用者の情報を取得」できるようになったこと、すなわち前出の(2)も、大きな変化です。 国にナンバープレートなどの情報が登録される普通車(登録車)の場合は、高速道路会社が運輸支局へ直接、車籍を照会できますが、軽自動車や二輪車は国が情報を登録せず、軽自動車検査協会に届出を行うものであるため、同協会への情報照会には弁護士を介する必要があったといいます。 そのため登録車よりもコストがかかるうえ、前出の法令の“穴”もあるため、やはり踏み込めないケースも多かったそう。 このようなことから、国土交通省の審議会資料によると、2021年度は「使用者が特定できたが、料金を回収できなかった」ケースが推計約560万円、「軽自動車及び二輪車で、ナンバープレートは特定できたが使用者が特定できず料金を回収できなかった」ケースが推計約2700万円あるとされています。
これらは年間の道路料金収入およそ2.5兆円(2021年度)のなかでは微々たる数値かもしれません。しかし今後、高速道路の「ETC専用化」などを推し進めるうえでは重要な課題とみなされていました。 というのも、単に高速道路への誤進入や、料金所機器の通信不良などといったことにも、後日請求で対応する方針が打ち出されているからです。そのたびに、従来の不正通行者と同じような手間をかけるわけにもいきません。今回の法改正は、よりストレスフリーで高速道路を利用できる将来への基礎固めという側面もあるといえそうです。