コミケ輸送の新勢力「東京BRT」どれだけ活躍できた? 「座れる」「安い」見えてきた課題も

新橋方面と東京ビッグサイト方面を直結する「東京BRT」。豊洲からの延伸後、はじめてコミケ参加者の大規模輸送を担うことになりました。どんな状況だったのでしょうか。

ゆりかもめ、りんかい線がメインのコミケ輸送

 新橋・虎ノ門と臨海部(晴海・豊洲・有明)をむすぶ快速バス「東京BRT」が、いよいよその真価を発揮する機会となりました。

 2023年8月12日・13日に東京ビッグサイトで開催された、国内最大級の同人誌即売会「コミックマーケット102」(コミケ)。2日間で計26万人が来場し、各交通機関がその輸送対応に追われました。そこへ、今年の春に豊洲から国際展示場へ延伸したばかりの東京BRTが加わったのです。※ ※ ※ まず、従来のコミケ輸送の主体は以下の3つです。・ゆりかもめ 会場目の前の「東京ビッグサイト駅」から、新橋駅および豊洲駅へむすびます。新橋まで片道390円。コミケ特別ダイヤが組まれ、およそ3分間隔の頻発運転となります。・りんかい線 会場の東京ビッグサイトから大階段を下りてさらに北側へ歩いた先の「国際展示場駅」から、大崎・渋谷・新宿・池袋方面、あるいは新木場方面へむすびます。こちらも特別ダイヤが組まれます。ゆりかもめに比べ1両あたりの輸送量が多く、都心・埼玉方面直結のため、こちらも利用者は膨大です。・都営バス 東京駅八重洲口へ直結する臨時路線「国展08」が、1時間あたり最大7便以上の頻発運転を行います。 その他、ジェイアールバス関東の東京駅行き路線なども運行されています。また、ビッグサイト横の船着場から日の出桟橋へ船便がありましたが、2020年をもって運航休止となっています。※ ※ ※ これらに割って入る形になった東京BRT。コミケ当日は臨時便を運行し参加者の輸送対応を行いました。 東京BRTの売りは速達性で、新橋からの最短距離ルートをとります。運賃は220円と、ゆりかもめより格安に設定されています。

実際どうだった?東京BRTの「コミケ輸送」

 さて、迎えたはじめての「コミケ輸送」。特段のトラブルもなく、粛々と運行が完了しました。コミケ参加者としてどんな使い勝手と言えるのでしょうか。●客が殺到してパンクしていないのか 一番の懸念は、ゆりかもめ・りんかい線に比べ貧弱な、1便あたりの輸送容量です。乗りたくても列が長くていつまで経っても乗れない――が懸念されていたため、「入場時間に間に合わなかった」という最悪の状況を想定してか、早朝の往路便を利用しようと判断した人は、まずまずといった数。新橋駅前のバス停には行列が無く、車内はギュウギュウ詰めにならず、穏やかな空気でした。 いっぽうで、帰宅のピークを迎える15時以降になると、時間を気にしなくてもいいことから、東京BRTを選ぶ人も発生し、積み残しが発生するようになります。とはいえ、それでも続行でバスがやってくるため、「絶望的なバス停行列」の状況は起きていませんでした。 慣れないイベント輸送につきものの「カオス」「大混乱」という状況は無く平穏に終わりましたが、これはおそらく「認知されていなかった」「あてにされていなかった」面も大きいと思われます。●移動そのものは快適だったか 東京BRTの延伸は、昨年12月に環状第2号線の「築地虎ノ門トンネル」が全線開通したことを受けたもの。大渋滞となっていた「汐留」などの交差点を、トンネルでまるごとバイパスできるようになりました。 これにより定時性はかなり改善され、新橋から約14分で国際展示場駅に到着しました。ゆりかもめはお台場周辺でクネクネと大回りルートを取り、東京ビッグサイト駅まで23分もかかるため、BRTは「もう着いたの?」という印象でした。 バスはほぼ直進なので、横揺れは最小限。発進・加速・停止の揺れは、タイヤ駆動で自動運転の「ゆりかもめ」もかなり強いため、乗り心地はBRTのほうが快適かもしれません。

「のりばが国際展示場駅にある」というのが難点?

●利用するのに便利だったか 東京BRTに対する利用者の不満の大半を占めるのが「新橋駅前のバス停が遠い」「国際展示場駅がそもそも会場から遠い」というものです。 コミケは異様な量の荷物を抱えて移動するのが基本なので、歩く距離は短いほうが楽です。「ゆりかもめ」がりんかい線に比べて有利なのは、会場と駅の近さです。その点、遠い国際展示場駅にあるBRTのりばは、やはり不便と言わざるを得ません。いっぽう、都営バスののりばは、東京ビッグサイト敷地内のロータリーから発着します。 新橋駅前ののりばは、ゆりかもめの駅の真下にあります。ゆりかもめに乗る場合は新橋駅から第一京浜をデッキで越えますが、東京BRTののりばへは第一京浜を渡らなければならず、移動にやや時間がかかります。もっともこのバス停位置は、引っかかる信号を極力少なくするという事情もあります。※ ※ ※ 利用者の声はSNS上でも多く見られましたが、おおむね「座れた」「スイスイで快適だった」といった肯定的な意見と、「のりばが不便かな」という意見でした。 先述のとおり、そもそもの認知度が低い状態であるほか、バスの定時性、輸送力に対する不信感もある一方、SNS上では「そんなのあったのか」「今度使ってみようかな」という声も多く見られ、今後さらに利用者は増えていきそうです。「まあまあの人数が試しに使ってみて、無難に切り抜けた」といった印象のある、東京BRTのコミケ輸送。次回以降、認知度と信頼性が上がるとともに、輸送能力として正念場がやって来るかもしれません。

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