「取舵一杯」…って速度の話なの!? 「第一戦速!」って何キロですか!? 独特すぎる海上自衛隊の“速力”表現

海上自衛隊の護衛艦では速度を表現するとき、独特といえる「戦速」という単語を使います。ただ聞き慣れないと、どれだけ速いのかさっぱりわかりません。しかも戦闘艦艇でない自衛艦の場合は使わないそうです。

基準となる速度は「原速」

 船が舞台の映画やアニメなどでは「第〇戦速!」と艦長が指示するシーンが描かれることがあります。この「戦速」という独特な言い方は、海上自衛隊の艦艇でも使われますが、いったいどれくらいのスピードなのでしょうか。

 海上自衛隊では、艦隊の統一した行動を実現するために、共通の速力表現を用いています。基準となるのが、経済(巡航)速力とされる12ノット(約22.2km/h)。これを基準となるスピード、「原速」として、3ノット刻みで速力を指示するようになっています。遅い順に並べると以下の通りです。・最微速(3ノット:約5.6km/h)・微速(6ノット:約11.1km/h)・半速(9ノット:約16.7km/h)・原速(12ノット:約22.2km/h)・強速(15ノット:約27.8km/h)・第一戦速(18ノット:約33.3km/h)・第二戦速(21ノット:約38.9km/h)・第三戦速(24ノット:約44.4km/h)・第四戦速(27ノット:約50km/h)・第五戦速(30ノット:約55.6km/h)・最大戦速(33ノット:約61.1km/h) なお、艦の性能によっては、第五戦速にあたる30ノットが「最大戦速」と表現される場合もあるようです。

最高速の場合は「一杯」!

 こうして見てみると、最大戦速が最も速いような印象を受けますが、これは常用でのハナシ。実際の最高速は緊急時に用いられる、機関の最大出力を発揮させる「一杯」という表現があります。 しかしながら、最大出力は連続させると機関の破損につながるので短時間の使用に限られ、速力も風や海流などの諸条件に左右されるので、具体的に何ノットと表現するのは困難。また最大戦速でも機関に無理を強いることになるため、最大の速力は第五戦速にあたる30ノット前後と公式では発表されているのです。

 護衛艦の場合は戦闘艦艇のため「戦速」という表現が用いられていますが、一般的には南極観測船として知られる砕氷艦「しらせ」など、戦闘艦艇ではない場合は言い方が少々異なります。「原速(12ノット)」以下では同じですが、高速側は「第一強速(15ノット)」といった感じで、戦闘時を表す「戦」ではなく「強」の表記が用いられます。 アメリカなどとの共同訓練でも用いられる、艦艇の速力表現。統率の取れた艦隊行動を実現するためには、非常に重要な役割を担っているといえるでしょう。

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