自賠責の賦課金額「安易にリークするな」 報道されても審議会で説明なし 縦割りで見えない値上げ議論

新たな“賦課金”の徴収を軸にした自賠責保険料の値上げ議論が大詰めを迎えています。ところが、審議会の前に具体な賦課金額の報道が。事前リークに批判はありつつも、肝心の賦課金額は、まだ決まっていません。

委員の意見が、明確に反映されない審議会

 自動車ユーザーが負担する自賠責保険の保険料を決めるための金融庁主催の審議会が、2023年1月13日15時に開催されました。交通事故被害者対策のための新たな賦課金は、保険料の実質的な値上げ要因ですが、車種ごとの具体的な金額は、適正な保険料を決める審議会の開催までに決められませんでした。

 金融庁が主催する「自動車損害賠償責任保険審議会」(自賠審)は、毎年1月に開催されます。ここで決定する「保険料率」は保険料算定の基本となり、同年4月から1年間に発生する新たな契約の保険料に反映されます。自動車ユーザーにとっても最も影響が大きい審議会です。 昨年の審議会では、賦課金制度導入を目前に、こんな意見がありました。「今後の自動車事故対策事業に関しては、今後の事業がどうあるべきか、どれぐらいの財源が必要か。安定・持続するためにはどのようなあり方があるかということが重要なので、まずしっかりと今後の事業のあり方を検討する、その中で財源も検討することが重要と考える」 制度導入の法案成立で1台150円を上限とするという目安は示されました。しかし、車種別の具体的な賦課金額は、現在も決まっていません。賦課金の制度や金額については、金融庁の審議会とは別に、国土交通省が検討会を開催。賦課金を担当する同省保障制度参事官室は、審議会とは別に3日後の16日午前に検討会を開催して、具体額を決定するため、13日の審議会では賦課金の金額について触れませんでした。 一方で、NHKは次のように報道。他のメディアも追随しました。・自家用車は125円・営業用のバスやトラック、タクシーは150円・バイクや緊急車両などは100円とする方針 出席した委員は、賦課金について丁寧な説明が必要という国会の付帯決議を引き合いに、国交省の対応を批判しました。「自賠責保険制度は自動車ユーザーのみならず、交通弱者に不可欠な制度。永続的に維持するためにも、理解が得られるような説明をしっかりやると共に、安易なリークがないようにしてほしい。何もしないでいると曲解されていくことが心配」

制度の理解より金融庁と国交省の縦割りが優先される?

 保険料率と賦課金は、行政にとっては別モノかもしれませんが、保険金の一部として自動車ユーザーが負担します。賦課金を含めた総額が保険料で、法律がある限り払い続けなければなりません。保障制度参事官室の説明では少なくとも2040年頃までは続く負担です。賦課金額を明示した上で審議会を開催すべきではなかったのでしょうか。 審議会の事務局は金融庁保険課が務めます。「審議会の目的は保険数理に基づき、保険料率が適正かどうかを審議するもので、賦課金制度は金融庁の担当外である」と説明します。 しかし、保険料率の適正性は、専門機関である損害保険料率算出機構が算定するので、審議会で異論はほとんどでません。委員の発言は、自賠責保険で実施する交通事故防止関連の活動の是非など、支出の無駄を省くことが中心です。財務省一般会計への貸付金の返済が滞っていることについても、賦課金の議論が始まる前から委員は問題にしてきました。財務省の担当者を招き、説明を求めるべき、という非公式の意見もあったほどです。 それでも保険料率以外の意見ついて審議会が動くことは、ほとんどありませんでした。審議会の形骸化が懸念されます。保険課は言います。「金融庁の所管外の議題を議論しないというふうにはなっていない。国交省も保険業界も同席するので、必要な対応を検討して、やってもらうのだと思う。オープンな場で議論するのは意味がある」

 斉藤鉄夫国交相は13日午前の会見で、次のように話しました。「13日の審議会で来年度の自賠責保険料率が決定されるわけではないと聞いている。国交省はオブザーバーとして参加し、賦課金の検討状況について報告する予定。賦課金の金額を明示して、それを受けて検討いただき、最終的に決まる手順である」 国交省は審議会の2回目の開催について言及しましたが、審議会で2回目の開催(1月20日)が決定したのは、審議会が終了する間際の同日夕方でした。 そんな中で金融庁は、来年からの審議会の開催を原則1回とすることを決めました。行政の縦割りと建前に阻まれ、自動車ユーザーから自賠責保険の全体像は極めて見えにくくなっています。

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