シンガポールの空港、羽田とどう違う? 現地でJAL機を影で支える“安全の番人”「航務」に聞く

旅客機の安全運航を、地上からのさまざまなサポートをすることで支える「航務」、実は海外空港で、その任にあたるプロフェッショナルがいます。日本とはどのような違いがあるのでしょうか。

4名体制で担当

 旅客機はパイロット、整備士はもちろんのこと、地上からのさまざまなサポートを提供するチームが一丸となって、目的地までたどり着きます。そのひとつが飛行計画をもとに、地上から最新の天気図や雨雲レーダーなどから目的地の天候や、揺れ、適切な巡航高度、必要な燃料といった安全運航に関わる情報をパイロットに提供する「航務」という業務です。 JAL(日本航空)では、旅客機の安全を舞台裏で担う航務スタッフを、海外にも配置しています。日本から5000km離れたシンガポール・チャンギ国際空港でこの業務にあたる安藤望さんに、その実務について聞くことができました。

 シンガポール空港所では4名体制で航務業務を担っており、現在は週間最大21便をこの人数で対応するといいます。安藤望さんはシンガポールへ赴任前、JALのホームである羽田空港で航務業務を経験。同氏は、羽田空港とチャンギ国際空港との業務の違いを次のように話します。「一番の大きな違いは便数と航務業務を担当する人数の差だと思います。現在(取材は2022年10月に実施)は便数こそ少ないですが、全体的な発着行程の管理や、ほかの部署とのやりとりを一人でやらなければならないので、その責任をすごく感じるところが一番の違いですね。羽田空港では、人数が多いので役割が細分化されていましたが、それをシンガポールでは一人ですべて対応する必要があります」 また、東南アジアにあるシンガポールでは、特有の気象への対処スキルを求められます。

まだまだ続く「シンガポールでの航務」裏事情

「シンガポールでは、雷雨への対処がとくに必要になります。日本ではさまざまな天候の対処が求められる一方で、シンガポールは主に雷雨だけ…ではあるのですが、それを正確に予測してコクピットに伝えるのが結構難しいなと感じています。実は(取材日)数日前も強い雷雨が着陸寸前に起き、ほかの部署とパイロットと連携し、航空機を40分ほど上空で待機させて安全に着陸させることできました。シンガポールにおける天候への対処は一般の方が見られるものも含め、いろいろな情報を入手して対応します。また雷雨が過ぎたあとは風向きの変化に伴い、使用滑走路の方向が変わるなんてこともありますね」

 そしてシンガポールで航務の業務にあたるポイントを、安藤望さんは次のように説明します。「情報や規制を確認するとき、(国土が小さく)空域が限られているシンガポールは『少し行けばマレーシア』といった状況が往々にあって、これも羽田空港で業務をしていたときの感覚とは違うなと思います。また、シンガポールでは毎年、航空ショーがありますが、これも数か月前からリハーサルが実施されるため各種規制が生じ、そこも羽田空港とは違うと思いました」 そしてチャンギ空港といえば、乗り継ぎ旅客の需要を見込み、日本の空港では見られないようなエンターテイメント性の高い設備を特長としています。「この空港で働き始めたとき、お客さまから道を聞かれたときに『滑り台ありますか?』といった質問をいただくことが何度かあり、『どういうことなんだろう』と思いましたが、チャンギ空港には本当に滑り台があります。この空港にはプールや映画館もありますので、スケールの大きさにはビックリしました」※ ※ ※ 同氏は、航務担当者から見た、シンガポール、ならびにチャンギ空港の強みを次のように話してくれました。「チャンギ国際空港は情報を提供するシステムが充実していて航務担当者をすごく助けてくれます。先述した雷雨の着陸のときにも、着陸予想時刻とほぼ同時刻に着陸することができました。また、この国は多民族を特徴としているので、それほど自分が外国人という感覚がありません。ダイバーシティ(多様性)の面でも学ぶところが多い国だと思います」。

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