鹿児島県の伝統菓子「ふくれ菓子」

「蒸しパン」といえば、日本全国でも馴染み深い食べ物です。しかし、鹿児島県では「ふくれ」、もしくは「ふくれ菓子」と呼ばれる蒸しパンに類似した郷土菓子が今も広く親しまれています。

まず、「ふくれ」という名前自体にびっくりする方も多いのではないでしょうか。生地を蒸しあげると膨(ふく)れるお菓子、という事でこの名前が付いたのですが、何でも省略したがる言語と言われる鹿児島弁にふさわしいユニークかつシンプルなネーミングです。

厳密に言うと、「ふくれ」と蒸しパンは似ているようで異なります。それは、実際に食べてみるとわかります。ふわっともちっとスポンジケーキを思わせる蒸しパンと違って、「ふくれ」はむっちりと密度が高い、ケーキというより甘いパンに近い食感です。蒸しパンは手でちぎって食べる事が多い反面、「ふくれ」は包丁でカステラのように薄く切って食べるのが主流です。材料に入っている重曹や、小麦粉と水分の比率が蒸しパンとは違っているためです。

作り方は郷土の家庭のおやつなだけにとても簡単です。材料の小麦粉、重曹、水、そして黒砂糖を混ぜ、蒸し上げるだけです。各家庭によっては卵が入ったり、黒砂糖のかわりにはちみつや白砂糖、きび砂糖と入れる場合もあったりします。そして、味も黒糖味をはじめ、よもぎ味、みかん味、あずき味、チョコレート味…などバリエーションが沢山あります。

現在では、各家庭で作る事は少なくなっている一方で、ふるさとの味として物産館などで手軽に買えるお菓子として定着しつつあります。鹿児島県の各所にある物産館を廻ると色々な味や形の「ふくれ」に出会うことができ、旅をより満喫することができます。また、最近では”ふくれ菓子”をモダンにおしゃれにアレンジされた「FUKU+RE」というスイーツも生まれていて、更なる発展を遂げています。

[写: Yuko@fliker]

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