任期を約1年半残し、異例の途中退任となった経済同友会の新浪剛史代表幹事。サプリメント入手を巡る警察の捜査は継続中で、自身の違法行為も立証されていないだけに、30日の記者会見では「やり残したことがある」と無念さをにじませたが、問われたのは経済団体トップとしての「高潔さ」だった。
新浪氏は2023年4月の代表幹事就任以来、強い発信力で日本経済に関する提言を続けた。企業が社会課題の解決に積極的に関与する「共助資本主義」を訴え、同友会に政策評価を行うシンクタンク機能を持たせることも課題に掲げた。
警察の家宅捜索を受け、9月1日にサントリーホールディングス会長を辞任したものの、代表幹事としての進退の判断は「同友会に委ねる」と表明。企業経営者が個人の立場で参加する同会で、自身に寄せられる信頼を踏まえた「勝算」もあったとみられる。
しかし、複数理事らで構成する同友会の倫理審査会は30日までに「辞任勧告相当」の見解をまとめた。これを受けて同日開かれた理事会では、賛否が真っ二つに割れた。新浪氏にとってこの事態は「予想外」だった。
岩井睦雄筆頭副代表幹事は会見で、「インテグリティー(高潔さ)」が焦点になったと明かした。新浪氏の違法性は現時点では明確になっていないが、疑惑を招いたこと自体が組織統治を揺るがしかねない。結果的に経済団体トップに求められる高い倫理基準に疑問符が付いた形だ。
新浪氏は、最近の一部週刊誌報道などには事実関係に誤りがあるとして、名誉毀損(きそん)の訴えも辞さない強気の姿勢を貫いた。ただ、「仲間が苦労した。申し訳ない」と、同友会「分断」の危機を招いた責任は認めざるを得なかった。
