石破首相、日韓安定の演出腐心=後継次第で摩擦再燃も

 【釜山時事】石破茂首相は30日、退陣を目前に控える中、韓国を就任後初めて訪問した。李在明大統領との会談では、首脳が相互に往来する「シャトル外交」定着をアピール。安定した日韓関係の演出に腐心したが、次期首相に誰が就任するか次第で、摩擦が再燃する可能性もはらむ。
 「『石破カレー』が印象深かった」。会談冒頭、李氏が8月の初来日時に首相が振る舞った特製カレーの話題を持ち出すと、首相も相好を崩して「お褒めいただき誠に光栄だ」と応じ、会場は和やかな雰囲気に包まれた。
 両首脳の会談は8月以来。約1カ月後という短期間の訪韓には、自身の外交成果と誇る首脳間の友好ムードを次期首相へ引き継ぐ狙いがある。外務省幹部は「次期政権下でも大統領に来てもらいやすい」と強調した。
 首脳会談では、首都一極集中や少子高齢化などの解決に向けた新たな枠組みを議論。双方の政治状況に左右されない関係構築を図った。
 首相が関係維持に奔走する背景には、自民党総裁選(10月4日投開票)の顔触れに対する不安も透ける。衆参両院で多数を握る野党各党の足並みがそろわない中、総裁選の勝者は次期首相に選ばれる公算が大きい。
 しかし、5候補のうち高市早苗前経済安全保障相は、島根県が条例で定める「竹島の日」式典への閣僚出席を主張。また、高市氏や小泉進次郎農林水産相、小林鷹之元経済安保相は靖国神社への参拝を続けており、首相に就任した場合、日韓間の火種となりかねない。
 一方の李氏は、就任当初に不安視された反日姿勢を封印している。ただ、日本政府関係者は「根本の反日意識は変わらないのではないか」と警戒。次期首相の行動次第で「良好な関係がいつまで続くかは見通せない」と指摘した。
 会談後、記者団の取材に応じた首相は、次期首相に対して「歴史を直視をする勇気、誠実さは持たねばならない」と暗にくぎを刺した。 
〔写真説明〕握手する石破茂首相(左)と韓国の李在明大統領=30日、韓国・釜山(AFP時事)

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