わずか数機のみ作られた「サソリみたいな航空機」なぜ? フツーと比べて「やけにまっすぐな翼」の理由とは

軽攻撃機・練習機を目指したものの、一般的なそれらのジャンルの機体と比較すると少しユニークな形状を持つジェット機。製造機数はわずか数機にとどまり、どこかの国が採用した話を聞きません。どのような特徴があるのでしょうか。

「サソリ」ボディにユニーク翼構成

 テキストロン・エアランドでは、軽攻撃機・練習機を目指したものの、一般的なそれらのジャンルの機体と比較すると少しユニークな形状を持つジェット機「スコーピオン」(サソリ)を開発しました。しかし製造された機体数はわずか数機にとどまり、2025年現在もどこかの国が採用した話を聞きません。どのような特徴があるのでしょうか。

「スコーピオン」の設計の特徴は、左右に離れたエンジンや、後退翼でなくピンと張った直線翼が目立つこと。鋭さと鈍重さが混じったどこかアンバランスな形をしています。さらにその機体名が示す通り、尖った機首と垂直尾翼という “尖った”外見をしています。平べったい胴体はサソリのそれに似ていなくもありません。

 この機体は軽攻撃機や練習機としての使用を目的に、テキストロンとエアランド・エンタープライズの合弁会社であるテキストロン・エアランドにより開発されました。公式サイトでは主翼の計6か所に赤外線誘導ミサイルやレーザー誘導爆弾を装備可能であるほか、エンジン間の胴体幅が広いのも、戦術偵察機材や監視機器を搭載するためで、それらは目的によって交換・搭載が可能になっています。つまり、この機のセールスポイントは、高い柔軟性を備えているということでした。

 とはいえ、筆者は実機を見る機会を得ましたが、高翼式の主翼の使い勝手はどうなのか、と考えざるを得ませんでした。

なぜ「やけにピンとした翼」が搭載された?

「スコーピオン」が直線状の主翼を採用したのは、練習機、軽攻撃機ともに高い速度を要求されなかったためと考えることと、現在はテキストロンの傘下になるセスナのビジネスジェット機サイテーションの直線翼の技術を流用し、開発費の削減のため設計期間の短縮を図ったとも推測できます。

 攻撃機の主翼配置については、米空軍でかつてA-10とA-9が採用を争った時のエピソードがあります。A-10は胴体の下から主翼を張り出していたため、地上に武器が接触しないように脚を高くしていました。A-9はその逆。高翼配置だったために脚を低くしたスタイルで登場しました。しかし、スコーピオンそのいずれでもなく、脚が高い高翼配置です。

 スコーピオンは全長が約14.5m、全高は約4.3mで、航空自衛隊のT-4練習機と比べると全長は1.5mほど長いものの、全高は0.3m低くなっています。それでも海外の航空ショーに展示されたスコーピオンを直に見ると大きく、高い位置にある主翼下への武装の取り付け作業はしにくいと考えてしまいました。ペイロード・ベイなどのアイデアは頷けるものの、すべてを合わせたらどことなく洗練されない、異形のスタイルに仕上がってしまった。そんな印象が筆者は今もぬぐえません。

「スコーピオン」を採用した国はありませんが、公式サイトでまだ閲覧できることから、テキストロンは今もどこかの国での採用を狙っているのかもしれません。

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