
衆参両院共に少数与党となって初めて迎える今回の自民党総裁選は、誰が新総裁になれば連立政権の枠組み拡大につなげられるのかが大きな争点になりそうだ。茂木敏充前幹事長や小泉進次郎農林水産相らは、連携相手と想定される日本維新の会や国民民主党との「近さ」を競うようにアピールしている。
「2022年度予算に賛同してもらう時からいろいろな協議をしてきた」。茂木氏は10日の出馬記者会見で、国民民主の玉木雄一郎代表の名前を挙げてこう強調。維新の藤田文武共同代表にも自ら言及し「幹事長時代に(重要)法案について議論した仲だ」と語った。
茂木氏は岸田政権で幹事長を務めていた22年末、当時の麻生太郎副総裁と協議しつつ、国民民主を連立に加える案を主導。実現はしなかったが、出馬が予想される主要候補の中では同党との関係が最も良好だとみられている。藤田氏にも触れたのは、維新との親密ぶりを見せつけたばかりの小泉氏を意識したようだ。
その小泉氏は8月下旬、大阪市で大阪・関西万博を視察。案内を受けた維新の吉村洋文代表(大阪府知事)と並んで記者団の取材に応じ、「改革の魂を持った政治家」と持ち上げた。吉村氏も小泉氏を「必要な改革を進める希有(けう)な政治家」と評価。小泉氏が「政治の師」と仰ぐ菅義偉党副総裁は、維新との太いパイプで知られる。
一方、小泉氏は10日、農水省で国民民主の榛葉賀津也幹事長と面会し、同氏の地元・静岡県の竜巻被害について陳情を受けた。この後、小泉氏は記者団に「築いてきた人間関係を生かし、政策課題を前に進めていく。その中に国民民主は含まれる」と指摘した。
林芳正官房長官は9日夜、維新の馬場伸幸前代表と会食。菅氏と近い武田良太元総務相(落選中)が間を取り持ったという。林氏に、小泉氏と維新の「蜜月」に割って入る狙いがあるのは明白だ。
保守色が濃厚な高市早苗前経済安全保障担当相や小林鷹之元経済安保相に対しては、参政党との連携を期待する向きがある。ただ、他の野党からは「高市氏らは右寄りすぎて組みにくい」との声が出ている。
〔写真説明〕党総裁選への出馬会見を終え、引き揚げる自民党の茂木敏充前幹事長(左)=10日午後、国会内
〔写真説明〕首相官邸に入る小泉進次郎農林水産相(中央)=10日午後、東京・永田町