
自民党派閥からのキックバック(還流)は「寄付金」か、「預かり金」か―。東京地裁で10日開かれた元参院議員大野泰正被告(66)の初公判では、派閥のノルマを超えて販売したパーティー券収入の還流分に対する認識を巡り、検察側と弁護側の主張が真っ向から対立した。
大野被告が所属していた旧安倍派から、ノルマ超過分の還流があったことは検察、弁護側双方に争いはない。双方の冒頭陳述によると、大野被告は2013年に参院議員に初当選し、翌14年から販売ノルマを割り当てられるようになった。
弁護側によると、大野被告は当初、派閥から受領した現金がパーティー券に関するものかどうかも分かっていなかった。元政策秘書の岩田佳子被告(62)が大野事務所の政策顧問に扱いを相談した結果、「預かり金」として処理することとした。
大野被告はこの「預かり金」について、派閥から求められたり、派閥を出たりする際には返却しなければならないと理解していた。いつでも返却できるように自身や事務所の口座残高が常に受領した総額を上回るよう管理していたという。
これに対し検察側は、この政策顧問が大野被告らに「本来は寄付金として収支報告書に記載すべきだが、派閥の意向も踏まえて専用口座に入金し『預かり金』として管理すべきだ」などと説明していたと主張。「裏金と疑われないよう費消せず保管すべきだ」とも伝えていたが、実際には大野被告の飲食費やクレジットカードの支払いなどに充てられていたと明らかにした。
〔写真説明〕自民党派閥裏金事件で、元参院議員大野泰正被告の初公判が開かれた東京地裁の法廷。中央は福家康史裁判長=10日午後、東京都千代田区(代表撮影)