2025年度の最低賃金改定で、中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)が示した目安額を超える引き上げに踏み切る地域が相次いでいる。23日までに引き上げ額を答申した28都道府県の地方審議会のうち21道県が目安額から上乗せした。物価高騰に加え、少子高齢化による人口減少や流出が進む中、隣県や大都市との人材獲得競争が大幅上げにつながっている。
目安額は都道府県を経済情勢に応じてA~Cの3ランクに分けて提示され、25年度はA、Bランクが63円、Cランクが64円となっている。これまでで最も高い引き上げ額で決着したのは鳥取県の73円で、目安とされた64円を9円上回った。島根、石川、福井の各県でも目安の63円から大きく上積みした。目安通りは東京、大阪など大都市を中心に7都府県。下回った地域はない。
目安から6円上乗せした茨城県では、地方審議会の議論が始まる前に県が働きかけて経済団体、労働組合と協議し、目安を超える引き上げで合意した。同県以外でも知事らが大幅上げを要望するケースが目に付く。山梨県の長崎幸太郎知事は「若年層がより高い賃金を求めて県外に流出し続ける事態が危惧される」として、山梨労働局長に隣県との格差是正を求めた。
「20年代に1500円」の目標を掲げる政府も、賃金向上担当相を兼ねる赤沢亮正経済再生担当相が一部の知事に目安を超える引き上げへの協力を直接要請するなど、働きかけを強めている。
まだ結論が出ていない19府県の審議会でも、8月末から9月上旬ごろにかけて答申が出る見通し。最低賃金が低めに設定されている地域が多く残っており、目安超えは24年度の27県を上回る可能性が高い。
