トランプ米政権が既存税率に一律15%を上乗せする形で相互関税を発動させた問題で、米政府が同措置を命じた大統領令を修正する方針であることが8日伝わると、輸出業者はほっとした様子を見せた。相互関税は7日以降、一部で日米合意に基づき日本側が事前説明した水準を大幅に上回る状態だからだ。ただ、農業関係者は「修正されるまで油断はできない」と警戒感を解いていない。
「安堵(あんど)している」。食肉輸出仲介業者、飛騨ミート農業協同組合連合会の溝脇実央参事は胸をなで下ろした。一方、別の農業関係者は修正が実行されるまで懸念は残ると指摘した。
日本から米国への牛肉には7日から41.4%という非常に高率な関税が課されている。3月までは26.4%だったが、4月以降は相互関税のうち10%が付加された。溝脇氏によると、この影響で「(飛騨ミートの)米国輸出は昨年に比べ50%を下回った」という。
日本側の説明では、7月の日米合意では関税率15%以上の品目には相互関税を課さずに既存税率を適用し、15%未満の品目は15%に引き上げることで決着。合意通りであれば牛肉関税は26.4%に戻る予定だった。
合意の履行を求めて急きょ訪米し、米側の閣僚と協議した赤沢亮正経済再生担当相は日本時間の8日に記者会見。米側は事務処理の誤りとして大統領令を修正し、合意を上回って徴収された関税は7日時点にさかのぼって返還されるという。ただ、修正時期は「適時」と繰り返すばかりで、依然として不透明だ。
一方、合意通りに修正されても、多くの品目で15%の関税が課される状態は変わりない。サントリーホールディングスの有代雅人常務執行役員は、従来はほぼ無税だったウイスキーについて「一定程度のインパクトがある」と言及。市場動向などを踏まえ価格対策も検討する方針だ。
