
幼児教育無償化って誰得?ママたちが怒る理由
「3歳から5歳まで、すべての子どもたちの幼稚園や保育園の費用を無償化します」
自民党のこの公約を聞いても、正直あまりピンと来ませんでした。それが待機児童解消とどう繋がるのか、イメージできなかったからです。ただ、私自身、認可外保育園に子どもを1年間通わせた時期があり、心を無にして給料の多くを支払っていた経験から(あの頃に無償化されていたらな…)とは思いました。
しかし、自民党圧勝から2週間後に「認可外保育園は無償化から除外」という情報が。その結果、反発の声が相次いだため、11月14日には認可保育園やベビーホテルなども原則すべて対象に加える検討に入ったとの報道がありました。
さらに「?」は強まるばかりです。ママ達も疑問の声をあげています。
約束を守らない
まず、こんなにもママ達を感情的にさせてしまう要因のひとつは、基本的な部分である「約束を守らない」ということです。
日々、人として試されながらも真っ当であろうと努力しながら子どもを育てているママ達にとって、言っていることをコロコロ簡単に変えている国のトップの様を「仕方ないよね?」と軽く流すことはできないのです。ましてや自分たちに直接関係ある事ならば尚更です。
感情論と自覚した上で、それでも言いたい部分です。
完全無償化ではない
認可保育園の保育料は、収入に応じて変わります。
平成24年度の国の調査では、認可保育園保育料の平均は2万円台。認可外保育園に比べたら三分の一以下です。認可保育園に入れると分かった時、我が家の経済的安心感は相当大きなものでした。
これら認可保育園の保育料は完全無償化されますが、高い保育料を支払う高所得者ほど恩恵を受けることになるので、一定以上の所得層には支給額上限を設ける方向で検討しているそうです。
そして、今回新たに無償化の対象に入った認可外保育施設では、月額2万5,700円を上限に支給する模様。対象外とされるよりはよっぽど良いのですが、完全無償化ではないようです。
こうした改善は喜ぶべきことですが、当事者からすると、ちょっと考えればすぐに分かりそうな点ばかり。現場が見えていないことが明らかですね。
問題は保育料ではない
認可外保育園へ通う家庭にも一定の補助が出ることになったとして、果たして待機児童解消は進むのでしょうか?認可保育園に入れず、認可外保育園の保育料がネックで仕事を諦めたママは喜んでいるかもしれません。
しかし、無償化になることで、認可保育園入園の倍率はさらに高まるでしょう。何度も言われていることですが、そもそもの受け皿不足を解決しないことには待機児童は減りません。
「保育料を上げてもいいから保育園を増やしてほしい」
「保育料を上げてもいいから保育士の待遇を改善して、質を上げて人を増やしてほしい」
こう感じているママは少なくないのではないでしょうか?
もしも月6万円もらえたら
幼児教育無償化の情報が出た当初「それならばバラマキの方がましだ」という意見も目にしました。私は妙に納得しました。
そこで、児童手当の拡充ということでこんなことを考えてみてはいかがでしょうか。
「月6万円もらえたら、あなたはどうしますか?」
具体的な財源云々の話はちょっと横に置いて、想像してみてください。
それでも働く
子どもがいる、いないに関わらず、働きたい女性は働きます。6万円すべてを認可外保育園へ支払ってでも働くでしょう。「働きたい」という純粋な気持ちは、お金の損得で動くようなものではないからです。
自分で育てる
中には、夫婦共働きをしないと生活していけないので家計の中心者以外が止むを得ず仕事をしている家庭もあります。そんな家庭にとって月6万円の補助が確保されるということは別の選択肢を見出すきっかけになるでしょう。
例えば、自分の手でゆっくりと育てたいという思いを持った女性は、パートタイムでの月8万円の収入より、月6万円で自分の手で育てることを選ぶかもしれません。子育ての対価としてこの手当を受け取ることでしょう。
選べると気がつく
このように、子育て観、仕事観は人それぞれです。
「月6万円もらえたら」
という問いで浮かぶイメージは皆異なって当然です。
上記以外にも、働く日数を週1日減らすという選択をする人もいるかもしれません。または、夫婦ともに、ワークライフバランスについてゆっくり向き合える少しの余裕を持てるかもしれません。
「フルタイムのワーキングマザーか、専業主婦か!?」と言った二極化されたイメージから解放されるきっかけにもなるでしょう。
子どもを持ってからの生き方を自分で選んでいける一助になるのでは?と思い、「もしも月6万円もらえたら」という視点を提案してみました。
(文・亀山 美千代)