
都市部を流れる川沿いの道は、一方が川や土手になっているため交差道路も少なく、一見、スムーズに走れると思いがち。しかし、予期せぬ危険が待っていることもしばしばです。せっかちな人や不慣れな人が困る“物件”が点在していることがあります。
人もクルマもスムーズに通れるとは限らない「川沿い」
ふだん私たちが使う道路の多くは、歩行者や自転車など他の交通とのバランスをとりつつも、主にクルマでの利用に適した形となっています。また長く供用されている道路でも、より使いやすく、安全に走れるように改良されていくことが常です。しかし、地形的な制約などから、そうした改良が十分に行われていない場合があります。
その代表的な例が、都市河川に沿って走る道路です。
こうした道路は、川の流路を変えることは容易ではないこと、川を渡る橋とたびたび交差することなど、改良を考える上で、一般の道路とは異なる環境にあります。そのため、一般の道路では「危険」とみなされるような状況が、改善されないままに残っていることが少なくないのです。
もしも、渋滞を避けるルートとして、こうした道路がスマホのカーナビアプリなどで案内され、漫然と走っていると、思わぬ危険や事故のリスクがある大ピンチに直面する可能性が高くなります。
その“ありがち”な具体例を、埼玉県川口市を流れる都市河川、芝川および新芝川で見てみましょう。なお、これらのポイントがスマホのナビアプリで案内されるシーンは限定的ですが、「案内されるルートでのリスクをわかりやすく表す例」として、ご理解ください。
橋の下だけ「狭さヤバ…!」
まずは新芝川右岸、歩行者自転車専用の「順信橋」の北側にあるアンダーパスです。
堤防沿いで橋をくぐるアンダーパスは、橋の取付部の構造体、川の堤防との関係により、高さや幅が制限されることが少なくありません。この順信橋のアンダーパスは、上流側・下流側とも道路が幅員6m程度で整備されているのですが、橋の下をくぐる部分だけ“極狭”になっているのです。
アンダーパスの手前には「2.0m」の高さ制限の標識が立てられていますが、同じく2mほどと思われる最大幅についてはまったく注意喚起がありません。周囲には街灯は少ないことから、夜間にまったく予備知識がないまま走っていたら、事故のリスクはかなり高いと思えます。
またその開口部は狭く、アンダーパスの先への見通しはよくありません。そのため昼間でも、アンダーパスの向こうに歩行者や自転車がいないかどうか、最大限の注意を払いつつ、徐行して通り抜ける必要があるでしょう。
橋の下の「高さヤバ…!」
つぎにご案内するのが、同じ新芝川の右岸、境橋下のアンダーパスです。
ここはさきほどの順信橋とは異なり、橋の下も道幅は十分です。しかし注意しなければならないのは、その高さです。
地上レベルから新芝川の堤防に向けて作られたスロープはそもそも低いうえ、このアンダーパスの部分では、鋼製の橋桁が斜めに渡されています。そのため高さ制限は、車両の通行が認められている道としてはなかなかにレアな「1.6m」とされ、黄色と黒の警告色で塗られた頑丈な鋼製の“バリア”が橋桁の手前をガードしています。
この高さについての注意喚起は、アンダーパスの手前の標識まで、何もありません。バリアの横桁には蛍光イエローの帯に「高さ制限1.6m」と表示されていますが、それでもバリアそのものに無数のスクラッチ傷が付いていることから、気付かずに進入し接触するクルマは少なくないと思われます。
実際に現地で取材中も、このアンダーパスの手前で止まり、進路を変えるクルマを複数確認しました。先行車に車間距離をとらずに付いていく、同乗者との話に夢中になり集中力を欠いたまま運転しているといった状況では、かなり危険性が高いと言えます。
「ここから先来るな」という無言の主張
最後に、川とは直接関係のない別の構造物との競合により、道路幅が制限されているところをご紹介します。それは芝川と国道298号および東京外環道が交差する部分をアンダーパスで抜ける、左岸側の川沿いの道路です。
このアンダーパスが通過する部分は、芝川の堤防と国道298号、東京外環道の橋脚に挟まれた非常に狭い場所です。しかも道幅の半分ほどを車道とは段差のある歩道が占めているため、車道の幅はクルマ1台が通るのがやっとという狭さなのです。
アンダーパスの長さは120mほどで、両端がスロープになっていること、さらにゆるやかに曲がっていることから、見通しはけっしてよくありません。そしてアンダーパス内には、わずかに広くなっている部分が1か所ありますが、ここですれ違うができるのは優れた車両感覚を持った人同士だけでしょう。運悪くアンダーパスを走行中に対向車に出くわしたら、どちらかが延々と後退しなければならない状況が浮かびます。
なお表通りからこのアンダーパスに入る脇道の手前には、川口市により「行き止まり」の標識が設置されています。実態とは異なったこの標識は「地域住民にのみ生活道路として利用してほしい」という地元自治体の強い意志が感じられます。
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以上、都市河川沿いの道路を走る際の注意しなければならない例を、芝川、新芝川を例にご案内しました。実際には、日本各地の都市河川でも同様の例が見られるはずです。スマホのカーナビアプリで川沿いの道路を走るよう指示されたら、こうしたリスクがあることをしっかり理解し、細心の注意を払って走行することをお勧めします。