伊勢うどんとは、その名の通り三重県伊勢市近辺でよく食べられているうどんです。うどんとはいいますが、一般的にイメージされるような汁に麺が浸っているようなものではなく、通常よりかなり太目の麺を長い時間茹で上げ、濃いたまり醤油に出しを合わせたたれを回しかけていただきます。長い時間茹でるため、ほとんどコシがありません。香川県民が食べたら腰を抜かすのではないでしょうか。
うどんにコシがない理由は、江戸時代のお伊勢参りにまでさかのぼります。お伊勢参りは当時の一大ムーブメントであり、庶民の多くは「一生に一度はお伊勢さん」と何日もかけて伊勢神宮に向かい、参拝することがブームでした。大挙する人々にすばやく伊勢うどんを提供するために常に茹でており、注文が入ったらすぐに出せるようにしていたんですね。
味は極太の麺に甘じょっぱい醤油だれが絡まり、表面はふんわり中はモチモチとした食感が楽しめます。麺をどんぶりの中でかき混ぜて、醤油だれにこれでもかと絡ませます。醤油は濃く、黒に近い色をしているのでうどんが黒く染まります。汁というより「たれ」なので、普通のうどんのように麺を食べ終わったあとに汁をすするということはありません。うどんより「みたらし団子」をイメージすると近いかもしれません。
某テレビの県民番組では、「伊勢うどんは三重県のソウルフード!」と紹介されていましたが、三重県の中でも伊勢市、特に伊勢神宮の近辺でなければあまり店舗を見かけることはありません。また、家庭で食べることはあまりなく(最近はお待ち帰り用のものも販売されていますが)、伊勢神宮参りの際に食べることが多いです。
江戸時代から続く伊勢のうどん。もちろん今でも食べることができますから、伊勢神宮参拝の折にはぜひ食べてみてください。