
京急では、「快特」を名乗りながら通過駅ゼロの列車が存在します。中には空港に行かない「エアポート急行」も。なぜこのような列車が走っているのでしょうか。
各駅停車なのに「快特」表示にしている背景とは
京浜急行で速い種別の「快特」。横浜を出ると停車駅は京急川崎・京急蒲田・品川のみで、並走するJRにもひけをとらないスピード輸送をけん引しています。
その一方で、「快特」を名乗りながら通過駅ゼロの列車も存在します。例えば三崎口駅を14時34分に出発する平日昼の「快特・京急久里浜行き」は、終点までわずか5駅、三浦海岸、津久井浜…と各駅停車して12分で運転が終わります。 さらには「エアポート急行」「特急」なのに「金沢文庫発、逗子・葉山行き」という列車も。やはり通過駅はありません。エアポート急行に至っては、空港と逆方向へ運転されています。 この「優等種別なのにまったく通過しない」列車は、久里浜線の京急久里浜~三崎口間や、本線の堀ノ内~浦賀間、逗子線で頻繁に見ることができます。なぜ「普通」表示にしないのでしょうか。 京急の担当者はこの理由について「列車運用で種別を合わせているため」としています。分かりやすい例で言うと「折り返して快特になる列車は、その前の便が各駅停車でも『快特』と表示する」などというものです。
その秘密は「運転士の事情」にあり?
京急久里浜駅と金沢文庫駅には隣接して車両基地や乗務員のオフィスである「乗務区」があり、各車両が受け持つ一連の運転スケジュールである「行路」は、大体これらの駅からスタートするようになっています。そのため久里浜線では列車が「京急久里浜駅から乗務開始→三崎口で折り返し→品川方面へ快特…」「品川方面から快特→京急久里浜で乗務終了」といった動きになるようなダイヤが多数組まれています。京急の最南端・三崎口駅まであと少しである京急久里浜駅で「わざわざ乗りかえ」となることが多いのはこのためです。 同様に、逗子線も「逗子・葉山発、羽田空港行き、エアポート急行」の列車を運転するために、金沢文庫駅からいったん逗子・葉山まで列車を運転し、折り返すというスケジュールが組まれます。浦賀方面では京急久里浜の乗務区を出て回送し、堀ノ内で進行方向を変えて「堀ノ内→浦賀→品川方面特急…」と長い乗務の旅につくのです。 これらの便宜上の列車運用で、いちいち種別を変えると煩雑になるということから、乗務区を出入りする線内列車も同じ種別にしているというわけです。 久里浜以南は「優等列車が乗り入れて各駅停車する」というダイヤで、「普通」を冠した列車は存在しません。ややこしいのが浦賀方面で、優等列車も普通も乗り入れるため、「堀ノ内発、浦賀行き、特急」「堀ノ内発、浦賀行き、普通」が混在することになります。両方ともわずか3駅間・所要時間5分の各駅停車。逗子線も金沢文庫~逗子・葉山間のみを走る各駅停車にエアポート急行と普通が設定されており、ここまでくると初見では何がなんだかわかりません。