
妊娠・育児で上司や同僚からの言動で精神的苦痛を感じるときは?
専門家の回答
職場において行われる女性労働者に対する妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いは、法律で禁止されていますが、それに加えて、雇用主は、妊娠・出産・育休等に関する言動によって、当該女性の就業環境が害されることがないよう、当該女性からの相談に応じ、適切に対処するために必要な体制の整備やその他必要な措置を講じなければならないと定められています。
なお、妊娠中の女性労働者に対する言動や不利益取扱いについては、近年マタニティー・ハラスメントという言葉が話題になり、世間に広く認知されるようになりました。
妊娠・育児に関する女性に対する言動が問題となるパターンとしては、大きく分けると、
(1)産休・育休等の制度の利用等に関する言動などで職場環境が害される場合と、
(2)妊娠出産したこと自体に関する言動などで職場環境が害される場合の2つの型に分けることができます。
(1)産休・育休等の制度の利用等に関する言動
制度を利用した場合の不利益取扱いを示唆したり、制度を利用しないように言ったり、制度を利用したことによる嫌がらせをしたりすることなどが当たります。
(2)妊娠出産したこと自体に関する言動
妊娠・出産したことによる不利益な取扱いを示唆したり、嫌がらせをしたりすることなどが当たります。
妊娠・育児に関して上司や同僚からの言動で精神的苦痛を感じた場合には、会社に相談窓口が設けられている場合は当該窓口に相談する、労働基準監督署に相談する、弁護士に相談する、など直接の当事者以外に相談することが大事です。
また、妊娠・育児に関する言動の内容・程度にもよりますが、それが社会通念上許容されず、女性の人格権を侵害するようなものである場合には、法的に慰謝料が発生する場合もあり、裁判例では会社と上司に対する慰謝料請求が認められた例もあります。
(弁護士:籔之内 千賀子)