奈良市で2022年、安倍晋三元首相を手製銃で殺害したとして、殺人などの罪に問われた山上徹也被告(45)の裁判員裁判の第11回公判が25日、奈良地裁(田中伸一裁判長)であり、前回に続き被告人質問が行われた。安倍氏と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係について、被告は「06年から(関係があると)思っていた」とした上で、安倍氏が21年に教団関連団体にビデオメッセージを送ったことについて「絶望と危機感を感じた」と述べた。
弁護人の質問に対し、被告は「非常に長い期間務めた首相なので、(旧統一教会が)どんどん社会的に認められてしまう。被害を受けた側からすると、非常に悔しい受け入れられない気持ちだった」と語った。
安倍氏と教団との関係について「(安倍氏が官房長官だった)06年に祝電を送っていた頃から(関係があると)思っていた」と語った。当時、教団関係者が「安倍さんはわれわれの味方」と話すのを聞いていたという。
政治家が教団のイベントに参加することについて「第2次安倍政権のメンバーに多いと知っていた」とした上で、イベントに国会議員が参加するのは「非常に良くない」と訴えた。こうした情報は、カルト問題を扱うサイトなどで得ていたとした。
15年に自殺した兄の葬儀が教団の教義に沿って行われたことなどをきっかけに、教団幹部への襲撃を考えるようになり、19年に韓鶴子総裁が来日した際、火炎瓶での襲撃を試みたが失敗したと述べた。「対象以外の人に危害が及ぶ」と考え、銃による襲撃を考え始めたと語る一方、手製銃の威力については「半分おもちゃのような、ごみみたいなもの」と表現した。
検察側の質問では、手製銃を計10丁作製した経緯を詳述し、パイプを重ねた構造について、ゲームを参考にしたと明らかにした。安倍氏への襲撃を決意した時期は「頭の片隅にはあったが、確定したのは22年7月以降」と述べた。
これまでの公判には、教団の被害対策に取り組む全国霊感商法対策弁護士連絡会の弁護士が証人出廷し、教団の関連団体に祝電などを送った安倍氏に対し、抗議文を送ったことを明らかにしている。
〔写真説明〕奈良地裁=奈良市

