末尾「0110」の電話番号で警察を装った特殊詐欺の多くが、国内の通信会社が海外事業者に提供したIP電話1回線から発信されていたことが警察庁などの調査で分かった。1回線から約200万回偽装発信され、数千万円詐取されたことが判明。通信会社の対策が不十分だったといい、同庁は21日、再発防止などについて報告を求めた。
回線を提供したのは、通信会社「アイ・ピー・エス」(東京都)の子会社。同庁などによると、同社は2月、海外の通信業者と「050」で始まるIP電話の回線利用契約を結んだ。この業者から利用権が詐欺グループ側に渡ったとみられる。
警視庁などが調べたところ、2~3月、この回線から約200万回の発信があり、うち、末尾「0110」で新宿署などを装った発信が約11万回だった。他に警察本部や官公庁の代表番号、通信事業者の電話番号を偽装したものが多く、少なくとも全国で11件、計約2800万円の被害が生じていた。
IP電話はインターネット回線を使い音声データを送受信する仕組みで、設定で表示する番号を変更できる。国内通信事業者は番号を変えた発信について、着信履歴からの折り返し先を統一する必要があるコールセンター業務のような正当な理由がない場合、遮断したり、非通知と表示したりするよう対策指針を定めている。ただ、この回線は子会社側の設定の誤りで偽装を防げなかった。
詐欺グループが設定の不備に気付いて悪用したとみられ、発信数は提供の2週間後から急増。同社は3月中旬に対策を講じ、その後は警察署などの番号を装った詐欺は急減した。
警察庁によると、今年1~9月の特殊詐欺被害は前年同期比約2.3倍の965億円と過去最悪。国際電話で警察官などを装う被害は引き続き多発している。
アイ・ピー・エス社の話 子会社の管理を徹底し、再発防止を図るとともに捜査に真摯(しんし)に協力していく。
〔写真説明〕警察庁=東京都千代田区

