厚生労働省は、出産費用の自己負担無償化に向け、子どもが生まれた際に支給する「出産育児一時金」に代わる新たな支援策を年末をめどにまとめる方針だ。平均出産費用が一時金の額を上回る状況が続いているため、公的医療保険で出産に特化した給付体系を新設することも視野に検討する。社会保障審議会の部会で議論を本格化させる。
正常分娩(ぶんべん)の出産費用は年々増加し、2024年度の全国平均は前年度比1万3265円増の51万9805円だった。正常分娩の場合、出産は医療保険が適用されない自由診療となるため、国は妊産婦を支援する目的で1994年に出産育児一時金を創設した。
一時金の支給額は当初30万円だったが、費用の増加を受けて、過去に4回増額。直近では23年4月に原則42万円から50万円へと大幅に引き上げたが、この時期に料金改定した医療機関が多く、同年度の平均費用は50万円を超過した。
増加する費用に対し、厚労省は一時金の引き上げで対応しても、妊産婦の負担軽減効果は限定的だと判断。医療保険を適用する場合は来年の通常国会で健康保険法を改正する。病気やけがをした際に給付を受ける「療養給付」の中には含めず、出産に適した給付体系を設ける方向だ。
部会では、無償化の対象とする「標準的な出産費用」の範囲を議論する。厚労省が設置した検討会の調査によると、8割の病院や診療所が産婦に出す特別な食事「お祝い膳」を提供。エステや写真撮影などを実施する医療機関も多く、妊産婦がサービスの有無を選択できない施設が大半だった。
出産費用の内訳を「見える化」し、医療保険で給付対象とする範囲を明確にする考え。麻酔で陣痛の痛みを和らげる無痛分娩に関しても、全国で利用が広がっており、論点の一つとなりそうだ。
〔写真説明〕出産費用に対する支援策の検討が進められている(写真はイメージ)

