インフルエンザが9月下旬に流行入りした。季節外れの高温や国際的な人の往来増などが、例年より早い広がりに影響したとみられる。本格的な感染拡大には至っていないものの、今後の動向に注意が必要だ。
厚生労働省によると、10月26日までの1週間に全国の定点医療機関から報告された患者数は、1機関当たり6.29人。都道府県別では沖縄(19.40人)が最多で、神奈川や千葉、埼玉など首都圏が続いた。流行入りの目安となる「1人」は9月下旬から上回っており、通年で流行した2023年を除くと09年以来、過去20年で2番目の早さだった。
インフルエンザは新型コロナウイルス禍の感染対策により、20年以降は患者数が激減。22年末に3年ぶりに全国的な流行期に入ると、翌年の春夏を経ても流行が続く異例の展開となった。24年12月には、現在の集計方法となった1999年4月以降で最多の患者数を記録した。
東京医科大病院の浜田篤郎客員教授(渡航医学)は「コロナ禍で流行が抑えられた期間が長く、社会全体で免疫が低下していた」と指摘。今期の流行については、「残暑で冷房の利いた室内に集まる機会が増え、飛沫(ひまつ)感染が起きやすかった可能性がある」と話す。気象庁によると、9月の全国平均気温は1898年の統計開始以来、3番目に高かった。
世界保健機関(WHO)の報告では、東南アジアなどで検査陽性率が30%を超える地域があり、直近も高い水準が続く。9月の訪日客数(推計値)は同月として初めて300万人を突破し、国内の流行に影響した可能性もある。
重症化を防ぐには、手洗いや換気、人混みでのマスク着用といった基本的な感染対策が有効だ。ワクチンは半年ほど効果が続くとされ、2~18歳には鼻に噴射するタイプもある。浜田氏は「打てる人は早めに接種を検討してほしい」と呼び掛けている。

