【カイロ時事】エジプトの首都カイロ近郊にあるギザの三大ピラミッド付近で1日、日本の支援で建設された、世界有数の規模を誇る大エジプト博物館(GEM)が全面オープンした。古代エジプトの遺物10万点以上を収蔵。特別ギャラリーでは、「黄金のマスク」を含むツタンカーメンの遺物約6000点が初めて一カ所で同時に公開される。
◇「国家の夢」
三大ピラミッドから約2キロの場所にあるGEMの敷地面積は約50万平方メートル。単一文明に関する博物館としては世界最大規模という。ツタンカーメンのコレクションに加え、併設の「太陽の船博物館」では日本の調査隊が発掘した「第2の太陽の船」の修復過程を公開。遺物の修繕技術向上を研究する保全修復センターや会議ホール、生涯学習センターも設置されている。地元紙アルアハラムは、オープンにより「国家の夢が実現する」と伝えた。
GEMは約30年前に構想が動きだした一大国家事業。国際社会で最も深く関与してきたのが日本だった。1日の開館式典でシシ大統領は「歴史の新たなページが開かれる」と強調し、日本による「多大なる支援」への謝意を表明した。
日本は国際協力機構(JICA)を通じて2006年から建設費として約840億円の円借款を供与。日本の研究機関や企業が技術を伝授し、専門家育成に当たった。開館後も博物館運営や保全修復支援は継続する。
JICAの田中明彦理事長は10月31日、カイロで記者会見し、「人類の共通遺産の保存、普及への貢献は意義あることだ」と強調。国際社会での日本の立場強化にもつながるとの認識を示した。
◇経済の起爆剤
エジプト経済は、新型コロナウイルス禍や中東情勢の混迷などで打撃を受けた。GEMは何度もオープンが延期され、昨年10月にようやく部分的な公開が始まった。
観光業はエジプトの主要産業の一つで、GEMは経済の起爆剤になると期待されている。政府は来館者数を年間500万人と想定。開館の波及効果で10万人以上の雇用創出も見込まれている。エジプトに隣接するパレスチナ自治区ガザの情勢が安定に向かうことなどが条件になるものの、外国人観光客数は2026年、今年より約80万人増えて約1860万人に達するとの見通しもある。
〔写真説明〕1日、カイロ近郊のギザで、大エジプト博物館の開館式典に合わせて披露されたツタンカーメンのマスクをかたどった照明(AFP時事)
〔写真説明〕大エジプト博物館の開館式典で、記念撮影に臨む各国首脳ら=1日、カイロ近郊のギザ(EPA時事)
〔写真説明〕全面オープンした大エジプト博物館=1日、カイロ

