対日重視、視線の先に中国=連携強化も戦略見えず―トランプ氏「80年経て友情築いた」

 トランプ米大統領は28日、米海軍横須賀基地に停泊中の原子力空母「ジョージ・ワシントン」での演説で、「日米の絆は悲惨な戦争の灰の中から生まれ、80年を経て素晴らしい友情を築いてきた」と語った。激しい競争を繰り広げる中国や、ロシア、北朝鮮を念頭に日米同盟の基盤固めを図った。
 トランプ氏は演壇で高市早苗首相に寄り添い、良好な関係を演出した。首脳会談などを通じ、日米合意に基づく対米投資の進展に加え、造船や人工知能(AI)、宇宙などの分野での協力を確認。高市氏からは防衛費増額の言質も取り付け、「米国第一」のトランプ外交の成果を強調した。
 米国の製造業復活を目指すトランプ氏にとって、日本との経済協力強化は国内向けの実績アピールに重要だ。一方で、レアアース(希土類)などのサプライチェーン(供給網)強化といった合意からは、レアアース輸出規制強化で米国を揺さぶる中国への対抗姿勢がうかがえる。
 トランプ氏は来日に先立ち訪れたマレーシアで、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国首脳を前に「自由で開かれ、繁栄するインド太平洋のために取り組む」と述べ、ASEANとの関係強化を表明。しかし、28日の空母での演説では紛争解決を取りまとめた自身の実績を誇示し、中国との貿易摩擦や、南シナ海情勢、北朝鮮の核問題に言及することはなかった。
 インド太平洋地域の同盟・友好国との関係を再構築し中国やロシア、北朝鮮に対抗したバイデン前政権と異なり、トランプ政権からは「戦略は何も示されていない」(米ランド研究所のジェフリー・ホーナン上級政治研究員)のが現状。「米国第一」と友好国との連携強化をどう両立させるかは見えていない。
 トランプ氏は30日、次の訪問地である韓国で中国の習近平国家主席と会談する。レアアースや米国からの穀物輸入などが議題となる見通しだが、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの支援も止めたい考え。米中デカップリング(切り離し)が非現実的な中、両国関係の行方を知る手掛かりとなる会談は、歴訪のクライマックスとなる。 
〔写真説明〕米原子力空母「ジョージ・ワシントン」で演説するトランプ米大統領(右)と高市早苗首相=28日、神奈川県横須賀市(ロイター時事)

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