
近く召集される臨時国会冒頭の首相指名選挙を見据え、自民、立憲民主両党が綱引きを演じている。立民が国民民主党の玉木雄一郎代表を野党統一候補として提起する一方、自民も党幹部らが接触し秋波を送る。国民民主は、双方との間合いを慎重に探る構えだ。
「虚心坦懐(たんかい)に、誰が一番いいのか議論していく」。立民の野田佳彦代表は8日、首相指名選挙への対応をこう記者団に説明した。
野党の足並みがそろわない中、立民は当初、首相指名選挙で与党に勝利するのは困難とみていた。しかし、自民の高市早苗総裁の保守的な政治姿勢などに公明が強い警戒感を示すと、立民幹部は「野党統一候補の首相指名獲得がリアリティーのある話になってきた」と姿勢を転じた。
衆院会派の議席数は、立民148、日本維新の会35、国民民主27。野党3党の合計は210だ。対する与党は自民196、公明24。首相指名選挙では、公明が自民に協力しなければ、野党3党が上回ることになる。
これを踏まえ、立民の安住淳幹事長は7日に維新の中司宏幹事長、8日に国民民主の榛葉賀津也幹事長と相次ぎ会談し、首相指名選挙での協力を要請。榛葉氏には、野党統一候補として「玉木氏ということも考える」と呼び掛けた。
もっとも、榛葉氏は記者団に「立民とは憲法、安全保障などで決定的に考えが異なる」と主張。「数合わせで一緒の行動を取ることは考えていない」と断じた。
自民も少数与党の脱却を目指し、働き掛けを強めている。高市氏は5日、玉木氏と東京都内でひそかに会談。麻生太郎副総裁も新執行部の発足に先立ち、パイプを持つ榛葉氏と意見交換した。自民関係者は「国民民主との連立は既定路線だ」と自信を示す。
国民民主は、現時点での連立入りに慎重姿勢を崩していない。政策実現の確約なく取り込まれることを警戒。支持団体の連合も反対している。
「特にない」。玉木氏は8日、国会内で高市氏の就任あいさつを受けた後、記者団に連立呼び掛けの有無を問われ、素っ気なく否定した。
〔写真説明〕国民民主党の玉木雄一郎代表(左から2人目)と握手する自民党の高市早苗総裁(中央右)=8日午後、国会内