農業は「破壊の中の希望」=戦下で耕作続ける農家―ガザ

 【カイロ時事】イスラム組織ハマス掃討を掲げるイスラエルの2年に及ぶ激しい攻撃で、パレスチナ自治区ガザは荒廃した。しかし、戦渦に巻き込まれながら土地を耕し続ける農家もいる。「破壊の中から希望を生み出すことができる。農業は復興の象徴だ」。フェラス・アルマスリさん(27)は時事通信のオンライン取材にこう語った。
 ガザ中部デイルバラ。損壊した建物が延々と続く中、青々とした畑がぽっかりと広がる。アルマスリさんは早朝から農作業に精を出す。「畑にいれば、忙しくて戦争のことは頭から離れる」。もともとは弁護士をしていたが、戦闘が始まり仕事はなくなった。父が5000平方メートルの農地を所有しており、農家に転身した。
 イスラエルによるガザ封鎖で種子や肥料、農薬といった農業資材や井戸水をくみ上げるための燃料の価格が高騰し、入手が困難になった。農地に避難民を受け入れたこともあり、戦闘1年目はほとんど活動できなかった。
 日本のNPO「パルシック」や現地NGO「PARC」の支援で農業資材を手に入れ、戦闘2年目で耕作を本格化させた。5月にはガザの食卓では「必需品」のトマトと唐辛子のほか、モロヘイヤを収穫した。戦闘が続く中、「最も幸せな瞬間だった」と振り返る。
 農業は収入源としての意味合いがあるが、「ガザの人々を助けたい」という思いも大きい。支援物資が十分に入らない状況では、食料自給率を高める必要があるからだ。
 国連によると、ガザ地区の農地のうち、利用できる状態にあるのは全体の1.5%にすぎない。それでもアルマスリさんは農地を拡大したいと考えている。戦闘が終結した暁には、弁護士と農家の「二刀流」を目指す。「大きな希望がある。私は絶望しないし、諦めない」と力を込めた。 
〔写真説明〕パレスチナ自治区ガザの農家フェラス・アルマスリさんの畑=5月、中部デイルバラ(地元NGO「PARC」提供・時事)
〔写真説明〕パレスチナ自治区ガザの農家フェラス・アルマスリさん=5月、中部デイルバラ(地元NGO「PARC」提供・時事)
〔写真説明〕パレスチナ自治区ガザの農家フェラス・アルマスリさんの畑でできたトマト=5月、中部デイルバラ(地元NGO「PARC」提供・時事)
〔写真説明〕オンライン取材に応じるパレスチナ自治区ガザの農家フェラス・アルマスリさん=9月30日

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