
<日本女子オープン 3日目◇4日◇チェリーヒルズゴルフクラブ(兵庫県)◇6616ヤード・パー72>
「日本女子オープン」史上2人目となるアマチュア優勝へーー。15歳の廣吉優梨菜(ひろよし・ゆりな/福岡第一高1年)が首位と1打差のトータル14アンダー・2位で、最終日最終組入りを果たした。「信じられない」。それが、ラウンドを終えた直後の感想だ。
トップと2打差の4位からスタートした一日は、前日までに比べると耐える場面も目立った。朝からぱらついた雨の影響で、ラフは重たさを増し、5番、13番の2つのボギーは、ともにティショットを外したところで叩いたもの。パーオン率も初日、2日目の94.4%から、77.8%まで減少。「雨でフェアウェイからでもドロップした球がありました」と、そのコンディションに対応しながらのラウンドだった。
とはいえ奪ったバーディは7つ。5アンダー「67」をマークし、快進撃は止まらない。最終18番もグリーン右の深いラフからのアプローチが、ピンから15メートルも奥に転がっていったが、最後は2メートルのパーパットを沈めパーをセーブした。「(一日を通して)最後みたいな、耐えるパーパットが入ってくれました」。15歳とは思えない、熟練のゴルフを続けた。
そのパッティングは、地元・福岡県を拠点にしている平田智コーチと作り上げている。今朝も、前日気になったパッティングを練習グリーンで修正した。「距離感の練習を多めにしました。10~15歩くらいの距離を転がして、何度も往復をして」。これもコーチと取り組むドリルのひとつで、「状態を見て取り入れました」。習ってきたものを、自分で考え、最適解を探っている。
今大会でアマチュア優勝を達成したのは、烏山城CC(栃木県)で行われた2016年大会の畑岡奈紗のみ。それ以来の快挙を目指すことになるが、このナショナルチームの先輩と、今年1月に米国で10日間ほどの合宿をしたことが、15歳にとっていい学びになっている。これももともと、平田智コーチと同じ『エンジョイゴルフ福岡』に在籍する佐々木信也コーチが、畑岡を指導していた縁で実現した。
初めての海外。そこで見た米ツアー6勝の実力者の練習に、くぎ付けになった。「トレーニングも一緒にしたんですけど、360度、動画で撮影してズレをチェックしたり、パターでもスタンス、ボール位置を細かいところまで確認していました。自分に厳しい。こういうことをしているから強いんだなと勉強になりました」。今週の会場には、過去10年間の優勝者のパネルが並んでいるが、そのうちの3枚は畑岡が喜ぶシーン。「すごいなと思った」。改めて、その偉大さを肌で感じる週にもなっている。
昨年の「日本ジュニア」(女子12歳~14歳の部)を制し、今年から日本ゴルフ協会(JGA)のナショナルチームメンバーになった廣吉は、日の丸がついた“代表ウェア”で、そのJGA主催の大会で活躍を続けている。7人いるメンバーのうち、岩永杏奈、長澤愛羅、新地真美夏はシンガポールで行われている「世界女子アマチュアチーム選手権」に出場しているため、今年、同チームからの出場者は廣吉ひとり。だが、前日には海外で戦う3人から『頑張れ~』という応援動画も届き、肩の力も抜けた。
あすは勝みなみが持つ日本人最年少優勝記録の15歳293日を上回る、15歳218日でのアマチュアVもかかる。大一番を前にしても「あまり実感が湧かないので、あしたも普通に回れるように頑張りたい」と淡々と答える。「出ることが目標だった」という日本一決定戦。そこで優勝が見えても「緊張よりも楽しい気持ちが大きい。いい位置で回れるので経験になる」と肝も据わっている。
この大会でアマチュア選手が最終日最終組に入るのは、16年大会の3日目を首位で終えた長野未祈(当時、高校1年)以来、こちらも2人目のできこと。偉業達成を果たし、現在、ハワイで開催中の米ツアー「ロッテ選手権」を戦う畑岡の耳にも届けたい。(文・間宮輝憲)