
自民党総裁選では、党是である憲法改正をどう実現するのかも焦点となった。候補者5人はいずれも自衛隊明記など4項目の党改憲案を継承する立場。衆参両院で少数与党となった中、野党との連携強化の必要性を訴えた。連立枠組みの拡大が、改憲への本気度を測る試金石となりそうだ。
自民は安倍政権下の2018年、(1)9条への自衛隊明記(2)緊急事態条項の創設(3)参院選挙区の合区解消(4)教育の充実―の改憲4項目をまとめた。だが、国民投票に向けた国会発議は実現できていない。発議には衆参で3分の2以上の賛成が必要だが、衆院では現在、与党と日本維新の会、国民民主党といった「改憲勢力」がこれを下回っている。参院は、先の参院選で国民民主、参政党が躍進して3分の2を維持した。
小林鷹之元経済安全保障担当相は「参院は改憲勢力が3分の2を超えた。環境は悪くない」と指摘。4項目のうち、自衛隊明記と緊急事態条項を優先し、総裁任期中に発議すると表明した。茂木敏充前幹事長は「憲法改正に賛成の政党も多くある。しっかりと議論を進め、早期に国民に提示したい」と表明した。
林芳正官房長官も「野党と一緒にやらなければ、いろんなことができない状況だ。これをチャンスと捉え、任期中に発議に結び付けたい」と主張。参院議員出身の林氏は参院選挙区の合区解消に意欲を示した。
改憲に積極的な姿勢を示す高市早苗前経済安保相は「自衛隊明記は何より大事だ」と強調。「条文案をお互いの党が持ち寄って議論する環境に憲法審査会を持っていきたい」と訴えた。「インターネットが無かった時代にできた憲法の『通信の秘密』と、今の状況はずいぶん違っている」とも主張した。
小泉進次郎農林水産相も4項目を優先する考えだ。「国民投票を一日も早く。その思いに変わりはない」と力説。維新の藤田文武共同代表とは「大きな方向性を共有している」とアピールする。「立場を同じくする、党派を超えた協力をどのように構築できるか。私が率先して取り組みたい」と強調した。
改憲論議のカギを握る衆参の憲法審査会長のポストは、自民から立憲民主党に移り、発議に向けたハードルは高い。連立枠組みの拡大などで改憲の機運を高められるかが課題となる。
〔写真説明〕自民党総裁選の討論会に参加する各候補者。(左から)小林鷹之氏、茂木敏充氏、林芳正氏、高市早苗氏、小泉進次郎氏=9月30日、東京・永田町の同党本部