シリア、イスラエルと対話姿勢=「反イラン」で利害一致

 シリアで昨年12月にアサド独裁政権を打倒したシャラア暫定大統領は24日、シリア首脳としては58年ぶりとなる国連総会出席を果たし、シリアへの攻撃を繰り返すイスラエルと対話を続ける姿勢を示した。イスラエルはイランを排除した「地域秩序の再構築」を画策。反イランではイスラエルと利害が一致するシャラア氏が、これに呼応した形だ。
 シャラア氏は国連での演説で、新生シリアは「危機の輸出国から地域に平和をもたらす存在になった」と国際社会にアピール。21日放送の米CBSテレビの番組では、アサド政権打倒により「国内からイランの民兵や(レバノンのイスラム教シーア派組織)ヒズボラを排除した」と訴えた。
 ただ、イスラエルはイスラム過激派との結び付きが指摘される暫定政権の動向を警戒。アサド政権崩壊後、「少数派ドルーズ派の保護」などを名目に、占領地ゴラン高原を越えてシリア南部で限定的な地上作戦を行い、シリア各地の軍事拠点などへの空爆を繰り返した。
 一方、イスラエルはトランプ米政権の仲介でシリアと安全保障協定締結に向けた交渉を進め、シリア南部に非武装地帯を設置しようとしている。締結を条件に、米国が前政権時代に科された各国の対シリア制裁の完全解除を後押しする可能性も取り沙汰される。イスラエルメディアのタイムズ・オブ・イスラエルは21日、交渉は「99%」完了したとする米当局者の見解を紹介した。
 両国の対話について、慶応大の錦田愛子教授(中東政治)は、イスラエルがシリアを従属させようとしているのが実態だと指摘。イスラエルにとって「『安全圏』拡大につながり、イラン排除による地域秩序再編の大きな一歩になる」と分析する。ただ「(反イスラエル感情が根強い)シリア国内で反発を抑え込めなければ、内戦再燃につながりかねない」との懸念も示した。 
〔写真説明〕国連総会で演説するシリアのシャラア暫定大統領=24日、米ニューヨーク(AFP時事)

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