
自民党総裁選は16日、告示日まで1週間を切り、候補者の記者会見などの動きが加速した。小林鷹之元経済安全保障担当相(50)は出馬会見で政策を発表。林芳正官房長官(64)は立候補の意向を表明した。小林氏は「減税」、林氏は「継続性」を売り込んで他候補と差別化を図り、1回目の投票で沈んだ前回総裁選の雪辱を期す。ただ、支持拡大にどこまでつながるかは見通せない。
「期限を区切った(所得税の)定率減税を実行する」。小林氏は会見でこう宣言。消費税についても「議論はすべきだ」と踏み込んだ。
小林氏は元財務官僚。党税制調査会の「インナー」と呼ばれる幹部でもあり、減税公約は「サプライズ」だ。参院選の惨敗を受け、党内には「民意は減税」(若手)との認識が広がる。小林氏に、減税を掲げる野党との連携も見据え、他候補との違いを打ち出す狙いがあるのは明らかだ。
小林氏が差別化を最も意識したのは高市早苗前経済安保相(64)だ。高市氏は小林氏と同様に保守色が強く、食料品の消費税率0%を掲げるなど減税の主張も重なる。
小林氏は会見で「私は穏健な保守だ」と力説。「世代交代が必要だ」と訴えた。タカ派イメージが強く、年齢差もある高市氏を念頭に置いた発言とみられる。陣営関係者は「小林氏は高市氏との違いをどう表現するかを心掛けた」と打ち明けた。
もっとも、道のりは険しい。16日は小泉進次郎農林水産相(44)も閣議後の会見で、出馬の意向を明言。総裁選に向けた一部世論調査では知名度の高い高市氏と小泉氏がトップを争う。小林氏は会見で、前回総裁選で反対した防災庁創設について「進めていく」と語り、創設にこだわる石破茂首相を支持する議員・党員に秋波を送った。
一方、林長官は16日、出馬の意向を記者団に明らかにし、「岸田政権、石破政権と継続性を持ちながらやってきた。この流れを止めないように取り組みたい」と語った。両内閣にまたがって官房長官を務めた実績をアピールした形だ。
こうした訴えは石破首相を支持する議員には好意的に受け止められているようだ。首相を支えてきた中谷元防衛相は16日の会見で「林氏を応援したい」と明らかにした。報道各社の世論調査では石破首相の続投を求める声も強かっただけに、党員の一部にも好感される可能性がある。
ただ、実績は足かせにもなる。「岸田、石破両政権と逆の政策は掲げられず、独自色を打ち出しにくい」(陣営幹部)ためだ。林氏は週内に政策を発表する予定で、陣営関係者は「1票ずつ積み上げていくしかない」と語った。
〔写真説明〕自民党総裁選に向けて記者会見する小林鷹之元経済安保相=16日午後、国会内
〔写真説明〕自民党総裁選に向けて記者会見する小林鷹之元経済安保相=16日午後、国会内
〔写真説明〕自民党総裁選に出馬する意向を表明する林芳正官房長官(右端)=16日午後、国会内